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茶室 [雑学]


 茶室(数寄屋)は単なる小屋で、それ以上のものを望むものではない。いわゆる藁家(わらや)にすぎない。
数寄屋という漢字のもとの意味は、「好き(ファンシー)〔趣味〕の家」である。のちになって、さまざまの茶の宗匠が茶室にたいする自分の考えに応じたさまざまの漢字を充てたので、数寄屋という用語は「空家(ヴェイカンシー」または「数寄屋(アンシンメトリカル)」を意味することもある。
詩的衝動を宿すためのはかない建物であるが故に「好き屋」である。当座の審美的必要を満たすために置く物以外は、いっさい置き物がないから「空家」である。
ひたすら不完全を崇拝し、故意に何かを未完のままにしておいて、想像力のはたらきにゆだねて完全なものにしようとするが故に「数寄屋」である。
~中略~
茶室は見かけは印象的ではない。それは一等小さい日本家屋よりも小さく、その建築に使われた材料は気品のある貧しさを暗示する意図がこめられている。
しかも、すべてこのことは深い芸術的先慮から出たものであり、その細部の仕上げに払われた配慮は、どんな立派な宮殿寺院建造に払われた配慮よりも周到であることを忘れてはならない。よい茶室は普通の邸宅よりも費用がかかっている。

茶の本
岡倉 天心 (著),桶谷 秀昭 (翻訳)
講談社 (1994/8/10)
P50








DSC_2107 (Small).JPG上野ファーム


タグ:岡倉 天心
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