国家が空洞化している [国際社会]
佐藤 ~前略
イスラエルのネタニヤフ首相の官房長を務めた知人が、おもしろいことを言っています。
―国際情勢の変化を見るときは、金持ちの動きを見るんだ。
最近になって格差が広がってきたというけれど、そうじゃない。昔から人口の五パーセントの人間に富は偏在していた。東西冷戦の間は、共産主義に対抗するために、その五パーセントの人間が国家による富の再分配に賛成していたけれども、冷戦後は、もはやそういうことに関心をもたなくなった。
いまやその五パーセントの格差がうんと広がって、ビル・ゲイツの資産は、ヨーロッパ諸国の予算を軽く上回っているし、アフリカ諸国のGDPよりも大きい。こんなことはかつてなかった。
しかし、大富豪、あるいはIBMのような大企業は、自分たちの儲けの半分を吐き出さないとつぶされることを経験則でわかっている。そこで自分たちのつくったファンドで、慈善基金という名で富の再配分をしている。
~中略~
アベノミクスは政府介入策かもしれないが、われわれはあまり関心がない。金融政策や財政政策といったって、世界の富は、国家を迂回して動いているんだ。
新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方
池上 彰(著), 佐藤 優(著)
文藝春秋 (2014/11/20)
P77
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