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交流分析4 ラケット感情 [医学]

 エリック・バーンは,ゲームの終わりにその人が経験する,なじみ深い不快感情を「ラケット感情(racket feelings)」と呼んだ。
ラケット感情を感じているときその人は,その感情を誰かに何とかしてもらいたいと思っている。それは,最初にその感情を感じたときに,その人の両親かその他の対象者に思ったものと同じものである。その人は,最初に誰かに思ったように,ラケット感情を感じている今も,誰かに期待しているのである。
 ファニタ・イングリッシュ(English,F.)は,その感情は,その人が育った環境で許可されなかった他の感情の代理として使われているともいえると述べた。
たとえば子どもが,本当は腹が立っているときに,怒り(「本物の感情」)の代わりに悲しみの感情(「ラケット感情(にせものの感情)」)を使ったとすれば,それはその子供の環境では支持されるかもしれない。怒りは拒否されるかもしれないが,悲しみは慰めを受けることができるかもしれないのである。
子どもは,このようにしてどのような感情が許可され,どのような感情によってどのようなスロトークを引き出されるかを素早く学ぶ。そしてそれを使い続けるのである。

交流分析にもとづくカウンセリング :再決断療法・人格適応論・感情処理法をとおして学ぶ
倉成宣佳 (著)
ミネルヴァ書房 (2015/4/25)
P33


DSC_2546 (Small).JPG出雲大社

P148
 ラケット感情とは,その状況に適応するために本物の感情の代用として使ったものであり,その後も同様の状況で使用し続けるものである。ラケット感情は本物の感情を覆い隠すように使われる。
そうすることで,なんらかのスロトークが得られるかもしれないし,最悪の状況を回避できるのである。また,本物の感情が問題解決的であるのに対し,ラケット感情は問題解決てきではない。

P149
 「怒り」は欲求や願望の充足を妨げられたり,自己(の側面)が脅かされたときに生起する感情であり,問題解決のための積極的で主張的なアプローチを生むものである。
怒りの時間枠は今である。怒りが今の時間枠で使われないと,それは溜め込まれてラケット感情にある。

 「悲しみ」は喪失と関係しており,何らかの愛着対象を失ったことへの感情である。
悲しみは「喪の仕事」を経て喪失対象を乗り越え,新しい関係形成に向けた主体的な行動に結びつくものである。本物の感情としての悲しみは,抑うつや不幸とは区別される。悲しみの時間枠は過去である。

 「怖れは危機を回避するための感情であり,特定の危険を対象とした感情である。
漠然とした脅威に対する怖れや特定のものに焦点が当たっていない怖れ,過剰な怖れなどは本物の怖れとは区別される。
怖れの時間枠は未来もしくは今であるが,今は手が打てない未来にのみ焦点化されるとラケット感情になる。

 「喜び」の時間枠は今であり,ポジティブな感情でありその時点では変える必要がないことを表している。
 ラケット感情は,人生脚本やゲームを構成する基の一つであり、環境を操作し,否定的なストロークを得る手段ともなる。また”悲しみに浸っていれば,誰かが助けてくれる” ”怒りを表せば,相手は思いどおりにしてくれる”など何らかの不合理な信念と結びついている。したがってカウンセリングにおいては,カウンセラーはクライアントのラケット感情にストロークせず,本物の感情にストロークすることを心がける。


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