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登山力 [雑学]

不快になるために山に登る人はいません。確かに急な上りはきついし、苦しい局面もあるし、危険もひそんでいます。でも、それらを全部ひっくるめて「身持ちがよくて楽しい」から山に向かうのですよ。
こんなふうにいえば、山登りをする人なら大方分かってもらえるのではないでしょうか。もしも、ただただきつくてつらいだけだったら、誰も山登りなんかやらないと思います。きつさやつらさを超える爽快感や達成感、心がどこまでも広がっていくような解放感を味わえる。だから、昔から人気があるのですよ。

登山力アップの強化書
徳永 哲哉 (著)
西日本新聞社 (2017/6/19)
P002

登山力アップの強化書 (のぼろBOOKS)

登山力アップの強化書 (のぼろBOOKS)

  • 作者: 哲哉, 徳永
  • 出版社/メーカー: 西日本新聞社
  • 発売日: 2017/06/19
  • メディア: 単行本

DSC_4804 (Small).JPG英彦山

P003
 遭難しようと思って山に入る人はいません。しかし、山に100%安全はない。だから、身につけないといけない技術は身につけ、知識として学ぶべき点は学ぶ。 それが安全で快適な山登りへの近道なのですよ。
私の持論は、「山登りは体力・技術・知識の総合力がものを言う」です。つまりそれが「登山力」。

P021
登山口で「さあ、登るぞ!」と気持ちは意気込んでいるにもかかわらず、歩き始めはなんとなく体がだるい、きつく感じる・・・・。そんな経験はありませんか。
 これは、最初に血液中の糖(炭水化物)を取り出して運動エネルギーとする現象で、血糖値が下がるからきつい、だるいと感じるのです。体がまだ有酸素運動モードに切り替わっていない状態です。
 山登りの技術の一つに「歩き始めはごくゆっくり」というのがありますが、これは「あっ、私の旦那様は今から有酸素運動を始めるんだ」と身体に教えるためなのです。
それを無視して、歩き始めからガンガンすっ飛ばしたらどうなるか。あなたの体は無酸素運動と勘違いすることでしょう。無酸素運動は100メートル走のような「太く短く」の運動ですから、長続きしません。つまり、バテるというわけです。疲労物質の乳酸は出て、その日はきつい、きついの連続になってしまいます。
 講習会でそんな話をすると、「歩き始めは血液中の糖を使うからだるい、きつい。ならば前の晩に甘いものをたくさん食べて、血液中の糖分を増やしておけばいいじゃない」なんてツッコミを入れる人がいます。
 でも、さにあらず、あまりにも血糖値が高くなると、脳は危険な状態と判断し、体に休息を取らせようとします。できるだけ動くな、安静にしろと指示をだすのです。したがって、山登りの前の晩に甘いものを過剰に摂取するのは禁物です。

P023
 糖=炭水化物の弱みは、貯金ができないこと。肝臓のグリコーゲン、血液中のブドウ糖のおほかは、脂肪に変えて身体に貯蔵します。(肥満の原因がこれ!)。
登山の前日に糖をいくら大量に摂取しても、翌日になると体内に残っていません(ゼロではありませんが)。朝、しっかりご飯を食べなさいというのは、そのためなのです。

P023
行動中に糖を摂取しないのもいけません。というのは、糖がなくなる(いわゆる低血糖状態)と、脂肪の燃焼も停止するからです。
歩きながら飴をなめたり、チョコレートを食べたりするのはいい方法なのです。登山用語でこれを行動食と呼ぶことはご存知ですよね。
~中略~
脂肪を使うと1週間もエネルギーを出し続けられるのですが、炭水化物は3時間ほどでなくなってしまいます。つまり、登山をすれば炭水化物のほうが先になくなり、なにも食べずに歩くと、疲労するだけで脂肪も燃えない。要は炭水化物の補給がポイントなのです。

P026
 カロリーでいうと、1日8時間山を歩いた場合、大方、3000~4000カロリー消費していることになるのです。それくらいのレベルの運動を行なっている割には、身体のことを大して意識しないでやっているのが現状です。
野球にしろサッカーにしろ、はたまたトライスロンにしろ、スポーツの前には100%必ずウォ―ミングアップを行ないますよね。それを考えると、山登りににもウォ―ミングアップは必要だということが分かっていただけるのではないでしょうか。
 ウォ―ミングアップの目的は、今から行う山登りに対する筋肉的な準備や体温を上げることで、関節や筋肉の動きを滑らかにして、その能力を引き出すことにあります。
また、筋肉をほぐして緊張を取り除くことで、心の緊張も自然と取れて余裕のある動きができるようになります。

P027
特に寒い時季は、体温が下がっており、筋肉がガチガチになっていますから、まずしっかりストレッチを行なって体を温めることをお勧めします。  大ざっぱにいって、ストレッチには二つの大きな効能があります。
一つは、各部位のい筋肉を伸ばすこと。それによって、間接の可動域が広がり、身体をじゅうなんにしてくれます。これはけがの予防になります。~中略~
 もう一つは、血液中に大量の酸素を供給することです。これは案外見落とされがちですが、大変重要です。「足は第二の心臓」という言葉をご存知でしょうか。

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クールダウンは決しておろそかにできません。運動を行なっている最中は血液の流れが盛んで、心臓は激しく動いて血液を送り出していますが、同時に筋肉も収縮を繰り返してポンプの役割を果たし、血流をよくする仕事を手伝っています。
この状態で急に運動をやめると、心臓が仕事を一手に引き受けることになり、大きな負担を強いてしまいます。そこで、筋肉を動かしながら、徐々に血液の流れを落ち着かせることが必要なのです。
 クールダウンを行なえば、自宅に帰ってからも翌日も疲れ方がまったく違うし、なにより筋肉の質を高めてくれるのです。

P052
暑い夏は冷たい飲み物がほしくなります。そこで、凍らせたペットボトルを持っていく。そんな人をたくさん見かけます。賛否両論あるかとおもいますが、私は賛成しません。
理由は体を冷やすからですよ。しかも、ハイドレーションシステムを使ってこまめに喉を潤す程度ならまだしも、小休止や大休止の際に一気にゴクゴク飲んでしまうと、急激に内蔵を冷やしてしまいます。
 そうなると、身体は疽の冷えた部分を暖めようとして、熱エネルギーを消費します。 そのぶん歩行に使うべき運動エネルギーを奪われるだけで、結果としてバテてしまうことになりかねません。これって、冷たいものを飲みすぎて夏バテするのと同じですね。従って、私は夏でも常温の水を持っていくのですよ。

P098
下りで爪が痛いという人がおられますが、そういう人は大方足首の部分をきつく締め、甲の部分をしっかり締めて、靴の中で足が動かいようにするのが基本です。足首の締め具合は木の実でいいと思います。

P178
 今、8時間という具体的な数字を挙げましたが、富士山や北アルプスの山々は、九州・山口の山に比べて、1日の行動時間が長く、基本的により体力というか、持久力が必要です。
普段登っている九州・山口の場合、日帰りの山行が主体ですから、特別なケースを除いて、1日に7時間も8時間も歩くことはめったにありません。長くあるいても5時間ほどでないでしょうか。
 ところが、富士山なら最低でも登りだけで5、6時間。北アルプスなら最低でも1日8時間は歩きます。厳しい上りに加えて、激しいアップダウンもあります。8時間というのは正味の行動時間で、休憩や食事の時間は含みません。つまり、体力的に最低でも1日8時間ペースを保って歩けるかどうか。これがキーポイントにあるわけですよ。瞬間的なパワーではなく、持久力があるかどうかです。

P180
要するに、こと体力面に限っても、山の実力は山でしか分からないということなのですよ。昔から「山のトレーニングは山に登るのが一番」といわれているのかもしれませんね。
 理由の一つは、祖母・傾山系縦走のように山には大方標準コースタイムというものがあって、それを目安として自分の体力を測ることができるからです。~中略~
 もう一つは、技術や知識の蓄積という側面も見逃せません。ウオーキングやジムにおけるトレーニングでは、山で必要な技術や知識は養えないからです。平地のウオーキングで8時間歩くのと、山道を8時間歩くのとでは、自ずと質が違いますよね。

P186
 山登りは「上りは心肺機能、下りは筋力」ですから、足の筋肉を鍛えれば下りに強くなりますよ。中でも重要な働きをしているのは、最も太くて大きい大腿四頭筋です。この筋肉が強いか弱いかで歩く力が格段に変わるといっても過言ではありません。また、大腿四頭筋は膝を包む筋肉でもありますから、鍛えれば膝痛の予防にも効果があるといわれています。/p>

P188
 大ざっぱに説明すると、筋トレとは、負荷をかけて筋肉を壊すこと。壊れた筋肉は適度な休息と栄養を与えることによって修復されます。その際、筋肉は前より少しだけ強くなろうとするのです。これを「筋肉の超回復」と呼びます。つまり、筋肉を強くするには、筋トレと筋トレの間に適度な休息が必要ということ。個人差はありますが、その目安が中2日です。

P190
 山登りをスポーツというカテゴリーに含めるかどうか意見の分かれるところではありますが、仮にスポーツとして見た場合、明文化されたルールブックはなく、すべてはプレイヤーに一任されています。よくいえば、これほど自由な者はない。
それとの関連でもう一つ、敷居が低いのも特徴です。並外れた身体能力や運動神経も、特別な才能も普通は必要ありません。ルールを知らなくても、誰もが気軽に始められ、それなりに楽しめるのです。
それは決して悪いことではないのですが、裏を返せば自由で敷居が低い点に落とし穴があるように思います。なぜならば、山という大いなる自然がフィールドだから。
 自然が人間の都合に合わせてくれることは一切ありません。下山の途中、西に傾き始めたお日様に向かって、「もう少し待ってくれ!」と叫んでも無駄です。お日様は淡々と西の空へ沈み、やがて漆黒の闇が訪れます。自然というフィールドでは、人間の都合とは無関係に事は起き、事は進む。そこに山登りの怖さがあるのですよ。  

登山力アップの強化書 (のぼろBOOKS)

登山力アップの強化書 (のぼろBOOKS)

  • 作者: 哲哉, 徳永
  • 出版社/メーカー: 西日本新聞社
  • 発売日: 2017/06/19
  • メディア: 単行本

 


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