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カテーテルアブレーション [医学]

 20世紀の終わりころから、「カテーテルアブレーション」と呼ばれる治療法が、心房細動の治療で使われるようになりました。第1章でご紹介した、心房細動に罹患した有名人の中でも、冒険家の三浦雄一郎氏、元バレーボール選手の益子直美さんなどは、カテーテルアブレーションで心房細動の治療をなされています。~中略~
 「カテーテル」は、血管を通して体の中に入れる細い管(直径2mmくらい)のことです。「アブレーション」は、「切除・除去」という意味です。「カテーテルアブレーション」は、カテーテルを心臓の中に入れて、不整脈が起こる心臓の場所を切除・除去する治療法です。
 切除・除去とはいっても、手術のようにメスや外科用ハサミで切り取るのではなくて、熱によって焼き切る方法です。カテーテルを足のつけ根や首の静脈から心臓に入れて、不整脈が起こる場所に高周波電流(約60℃)を流し、直径5㎜くらいのやけどを作って不整脈起こらなくするものです。
低温やけどは40~60℃の比較的低温で起こるやけどのことを言いますが、約60℃の温度でやけどを起こさせるカテーテルアブレーションも、ぎりぎり低温やけどの範疇に入るのでしょうか?
 最近ではクライオアブレーションという方法もあります。クライオ(cryo)とは、「冷凍の」、「低温の」という意味で、心筋を加熱するのではなく、逆に熱を奪って不整脈を起らなくする方法です。~中略~
 カテーテルアブレーション自体は、もともと1982年頃に、別のタイプの不整脈の治療のために考案された方法です。カテーテルアブレーションが心房細動で使われるようになったのは、フランスの医師ミシェル・アイサゲール博士が1998年に行った画期的な仕事がきっかけとなっています。
この仕事の何が画期的だったのでしょう?それはなんと「心房細動は心房でなく肺静脈から始まる」ことを明らかにしたのです。
 不整脈は、心房細動に限らず「起源(「トリガー」ともいわれます)」と呼ばれるきっかけ、および「リエントリー」と呼ばれる不整脈を維持する機構の2つが必要です。
すなわち、
 不整脈の発生=起源(トリガー)+維持機構(リエントリー)
です。

心房細動のすべて ――脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章
古川 哲史 (著)
新潮社 (2018/12/14)
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 あらゆる医療行為、例えば手術、CTなどの検査、薬の内服、場合によっては採血によっても合併症が起ります。いわんやカテーテルアブレーションは心臓の中にカテーテルを入れて、しかも軽いやけどを起こさせる手技なので、一定の割合で合併症が起ります。 死に至るような合併症は稀で0.1%程度ですが、完全に元に戻る程度の継承のものも含めると、5~10%に合併症が起ります。
 この中で3大合併症といわれるのが、「脳梗塞」「心タンポナーゼ(心臓に穴があく)」「食道関連合併症」です。頻度はそれぞれ、0.1~1%、1%、6%とされています。

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 発作性心房細動では、1回の治療で約60%、2~3回繰り返すことによって約80%の患者さんで心房細動が起らなくなるといわれています。薬物によるリズムコントロールの割合が約25%だったことを考えると、圧倒的に高い確率でリズムコントロールが達成できるのです。
 慢性心房細動の患者さんに対する成功率はこれより低くなります。それでも、1回の治療で約40%、複数回の治療で約60%の人が1~2年間心房細動なしに過ごせるといわれています。
 ただし、これらはいずれもカテーテルアブレーションから1~2年後の成績です。それ以降、少しずつですが、再発する心房細動が増えていきます。10年後には決して少なくない確率で心房細動が再発します。

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 2つの臨床試験を踏まえて、2018年時点でいえることは、カテーテルアブレーションはこれによってメリットが得られるケースを選択して行うのが賢明だろう、ということではないでしょうか?
それでは、カテーテルアブレーションによりメリットがあるのはどんなケースでしょう。次の2つだと思われます。
 ✓心不全を合併した人:前記したように心不全を合併した人は生命予後・QOLともカテーテルアブレーションの方がよいという結果が出ています。
 ✓強い症状がある人:カテーテルアブレーションはQOLを改善していることから、強い症状がある人は大きなメリットが得られる可能性があります。カテーテルアブレーションがうまくいった人からは、「こんなに心臓が楽になるとは!」との感激の声がよく聞かれます。
 この2つは絶対的条件ですが、これ以外にもカテーテルアブレーションに踏みきる決断を後押しする材料はいくつかあります。
 ✓若い人:略
 ✓発作性心房細動の人:略
 ✓抗不整脈薬が無効だった人:略

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タグ:古川 哲史
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