慎みの心 [倫理]
あなたは生来の短気者だという。しかし、生まれつき短気ということはありえない。
あなたが好き勝手に行動するから、そうなっただけのこと。
あなただって貴人を前に出たら、勝手気ままにふるまえるものではなかろう。短気に走る行動は、本人に慎み改めようという気さえあれば、直らないことはないはずだ。
以前、奉公人に手を出したとき、その男は怒ったり怨んだりする態度は見せなかったのではないか。
内心で激しく怨み、怒ってはいても、相手が主人なので耐え忍んでいたのだ。縁もゆかりもない他人がその男を殴りつけたとしたら、あなたに対したときのように、じっと耐え忍ぶだろうか。間違いなく向かっていくはず。しかし、相手が主人だったから刃向うことを慎んだのだ。
このことをよく考えないといけない。慎むことで直らないものは何もない。ましてや、その慎みの心を父母に向けないようでは畜生と何ら変わらない。
石田梅岩『都鄙問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ14)
石田梅岩 (著), 城島明彦 (翻訳)
致知出版社 (2016/9/29)
P106
タグ:石田梅岩
コメント 0