人を知らざるを患えよ [倫理]
一身独立して一国独立する事 [倫理]
第一条 独立の気力なき者は、国を思うこと深切ならず。
自ら心身を労して私立の活計をなす者は、他人の財に依らざる独立なり。
人々この独立の心なくしてただ他人の力に依りすがらんとのみせば、全国の人は皆依りすがる人のみにて、これを引き受くる者はなかるべし。
第二条 内に居て独立の地位を得ざる者は、外にあって外国人に接するときもまた独立の権義を伸ぶること能わず。
独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る、人を恐るる者は必ず人に諂うものなり。
常に人を恐れ人に諂う者は次第にこれに慣れ、その面の皮鉄の如くなりて、恥ずべきを恥じず、論ずべきを論ぜず、人をさえ見ればただ腰を屈するのみ。
いわゆる習い性となるとはこの事にて、慣れたることは容易に改め難きものなり。
第三条 独立の気力なき者は、人に依存して悪事をなすことあり。
右三箇条に言うところは、皆、人民に独立の心なきより生ずる災害なり。
今の世に生まれいやしくも愛国の意あらん者は、官私を問わず先ず自己の独立を謀り、余力あらば他人の独立を助け成すべし。
福沢 諭吉 (著)
学問のすすめ
岩波書店; 改版版 (1978/01)
P33 学問のすゝめ 三編
悪口がいけない理由 [倫理]
無視するな [倫理]
惜福の説 [倫理]
幸福不幸福というものも風の順逆と同様に、畢竟(つまり)は主観の判断によるのであるから、定体はない。
しかし先ず大概は世人の幸福とし不幸とするものも定まって一致して居るのである。
で、その幸福に遇う人及び幸福を得る人と然らざる人とを観察して見ると、その間に希微の妙消息があるようである。
第一に幸福に遇う人を観ると、多くは「惜福」の工夫のある人であって、然らざる否運の人を観ると、十の八、九までは少しも惜福の工夫のない人である。
福を惜む人が必らずしも福に遇うとは限るまいが、何様(どう)も惜福の工夫と福との間には関係の除き去るべからざるものがあるに相違ない。
惜福とは何様いうのかというと、福を使い尽くし取り尽くしてしまわぬをいうのである。
努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P56
植福の説 [倫理]
有福、惜福、分福、いずれも皆好い事であるが、それらに優って卓越している好い事は植福という事である。
植福とは何であるかというに、我が力や情や智を以て、人世に吉慶幸福となるべき物質や情趣や智識を寄与する事をいうのである。
即ち人世の慶福を増進長育するところの行為を植福というのである。
努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P80
分福の説 [倫理]
一瓶の酒、半鼎の肉を頒つも頒たざるももとより些細の事である。しかしその一瓶の酒を頒ち与えられ半鼎の肉を頒ち与えられた人は、これによって非常に甘美なる感情を惹起されるのであって、その感情の衝動された結果として生ずる影響は決して些細なものでない。甚大甚深のものなのである。
~中略~
およそ人の上となりて帥いるものは、必ず分福の工夫において徹底するところあるものでなければならぬ。
~中略~
我能くひとに福を分てば人もまた我に福を与うべく、たとえ人能く我に福を与えざるまでも、人皆心私(ひそ)かに我をして福あらしめんことを禱るものである。
努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P70
明徳 [倫理]
P58
人間の万苦は明徳のくらきよりおこり、天下の兵乱(ひょうらん)も又明徳のくらきよりおこれり。これ天下の大不幸にあらずや。聖人是(これ)をあわれみたまい、明徳を明(あきら)かにする教(おしえ)を立て。人の形(かたち)あるほどのものには学問をすすめたまえり。四書五経にのする所もみな是(これ)なり。(下 丁亥の春)
P64
倩(つらつら)世間の福(さいわい)を思いくらべるに、身やすく心たのしみ、子孫のさかえるを上(かみ)とす。
命(いのち)のながきを次とす。位(くらい)たかく富(と)めるを下(しも)とす。此(この)福(さいわい)の種は明徳仏性なり。此(この)種をまきて此(この)福を造(つく)る田地(でんち)は、人倫日用(じんりんにちよう)の交(まじわり)(住人注;日常生活の営みのなかにある)なり。(序)
中江藤樹 人生百訓
中江 彰 (著)
致知出版社 (2007/6/1)
足を踏み入れてみる [倫理]
実際に社会に足を踏み入れてみる、観察する、そういうことをしなければ、せっかく得た知識も生きてはこない。
それどころか、誤った方向へ進んでしまう。
部屋のなかで、世界地図を広げてじっとにらんでいたところで、世界のことは何もわかりはしないのだ。
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P129
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2011/03/22
- メディア: 文庫
長浜港観光船乗り場
怒り [倫理]
私たちが怒る理由は簡単です。自分が信じている「~べき」「~べきでない」が目の前で裏切られたときに怒りを感じるのです。
イラッとしない思考術
安藤 俊介 (著)
ベストセラーズ (2014/11/26)
P027
老いるのは免れない [倫理]
不殺生 [倫理]
それほどおサルが好きな河合さん(住人注;河合雅雄)が、サルには同族を殺す性質がある、と言っています。同族同士が互いに戦って殺すのは、哺乳類ではライオンとかトラとかいう猛獣を除く とサルしかいない。
人類はサルのそういう性質を受け継いで殺し合いをするのではないかと言うんです。
どこかで人間は、殺すことが好きなのかもしれない。人間の本能の中に、殺すことを好む本性が宿っているんじゃないかと、私は思うんで すね。
そうすると、人間が人を殺したり戦争が好きな性質は治らないということになります。しかし、治らないかもしれないからこそ、「殺してはいけ ない」という道徳が必要なのです。これは難しいことなんですが、仏教はこの戒律を第一(住人注;十善戒の不殺生)
に置いています。
梅原猛の授業 仏になろう
梅原 猛 (著)
朝日新聞社 (2006/03)
P91
臼杵石仏
働き者の国は栄える [倫理]
国民の年々の労働は、その国民が年々消費する生活の必需品と便益品(1)のすべてを本来的に供給する源であって、この必需品と便益品は、つねに、労働の直接の生産物であるか、またはその生産物によって多の国民から購入したものである。
したがって、この生産物またはそれで購入されるものの、これを消費するはずの人々の数に対して占める割合が大きいか小さいかにおうじて、国民が必要とするすべての必需品と便益品が十分に供給されるかどうかが決まるであろう。
だがこの割合は、どの国民の場合も、次の二つの事情によって左右されるにちがいない。すなわち第一は、国民の労働がふつう行われるさいの熟練、技能、判断力の程度如何であり、また第二は、有用な労働に従事する人々の数と、そのような労働に従事しない人々の数との割合である。
どの国でも、地味、気候、国土の大きさがどうであれ、国民にたいする年々の供給が豊かであるか乏しいかは、その特定の状況のもとで、右の二つの事情に依存するにちがいない。
国富論 (1)
アダム・スミス (著), 大河内 一男 (翻訳)
中央公論新社 (1978/4/10)
P1
知者は惑わず、仁者は憂えず [倫理]
我れ既に天の物なれば、必ず天の役あり [倫理]
為政者の姿勢を国民は見ている [倫理]
士気 [倫理]
気とは、人に負けまいと思う心、すなわち負けじ魂と、恥辱を知ってそれを悔しく思う気象のことである。
それを振うというのは、常にそうした心を持って、その精神を振い立て振い起し、絶えず、緊張をゆるめず油断のないように努力することである。
この気というものは、生命のあるものはみな備えているものであって、鳥や獣でさえ持っている。
それで鳥や獣でも、ひどく気が立った時は、人に危害を加えたり苦しめたりすることがあるのだから、人間の場合は、なおさらである。
その人間の中でも、武士が一番この気を強く身につけているから、一般にこれを士気(しき)とよんでいる。
どんな年若な武士に対してでも、それが武士であるならば無礼を加えようとしないのは、この士気を恐れてのことであって、別にその人の腕前や身分を恐れるからではないのである。
ところが、長く無事平穏な時代が続くうちに、武士本来の気風が衰え、気力も弱々しくなり他人に媚びへつらい、武士の家柄に生まれながら武道の修行を忘れてしまい、出世を望み遊興におぼれ、何事もまず損得を計算し、ことの是非を二の次にして大勢につくといった情けない武士が多くなった。
そのため昨今の武士は、人には負けぬ、恥辱は耐えられないという男らしい勇ましい気象をすっかり失って、腰にこそ大小を帯びて入るものの、内実は呉服反物(たんもの)の包みをかついだ商人や、樽を背にした樽拾いにも劣るほどで、雷鳴や犬の声にも後ずさりするような、腰抜けになってしまった。
啓発録
橋本 左内 (著)
講談社 (1982/7/7)
27
戒めをたもち、品性あるある人 [倫理]
ここで、資産者たちよ。戒めをたもち、品性あるある人は、なおざりにしないことによって、財産が大いに豊かとなる。
これが、戒めをたもっていることによって、品性のある人の受ける第一のすぐれた利点である。
また次に、資産者たちよ。戒めをたもち、品性あるある人は、良い評判が起こる。
これが、戒めをたもっていることによって、品性のある人の受ける第二のすぐれた利点である。
また次に、資産者たちよ。戒めをたもち、品性あるある人は、いかなる集会におもむいても、すなわち、王族の集会でも、バラモンたちの集会でも、資産者たちの集会でも、修行者たちの集会でも、どこに行っても、泰然としていて、おじけることがない。
これが、戒めをたもっていることによって、品性のある人の受ける第三のすぐれた利点である。
また次に、資産者たちよ。戒めをたもち、品性あるある人は、死ぬときに精神錯乱することがない。
これが、戒めをたもっていることによって、品性ある人の受ける第四のすぐれた利点である。
また次に、資産者たちよ。戒めをたもち、品性あるある人は、身体がやぶれて死んだのちに、善いところ、天の世界に生まれる。
これが、戒めをたもっていることによって、品性ある人の受ける第五のすぐれた利点である。
ブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経
中村 元 (翻訳)
岩波書店 (1980/6/16)
P35
己を愛しいと知る者は他を害してはならぬ [倫理]
知行合一 [倫理]
人の声に耳を傾ける [倫理]
平常心 [倫理]
心は平なるを要す。
平なれば則ち定る。
気は易なるを要す。
易なれば則ち直し。
「 言志晩録 」第六条
佐藤 一斎 著
岬龍 一郎 編訳
現代語抄訳 言志四録
PHP研究所(2005/5/26)
P132
自ら箸を取れ [倫理]
知らしむべからず [倫理]
九 子曰わく、民は由( よ )らしむべし、知らしむべからず。
~中略~
先生がいわれた。
「 人民を従わせることはできるが、なぜ従うのか、その理由をわからせることはむつかしい 」
~中略~
人民に、法令の内容やその発布の理由についてよくわからせれば、それにこしたことはないが、それがたいへん困難だといっているだけなんである。
孔子は、法令の理由なぞ人民に教えることは不必要で、ただ、一方的に法令で束縛したらよいという、専制主義的な思想を説いているのではない。
泰伯篇
論語
孔子 ( 著 ), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07)
P220
一滴の水でも生かして使え [倫理]
京都嵯峨の天竜寺管長を務められた滴水禅師の逸話を紹介しましょう。
禅師が修行僧のころの経験です。夏の暑い日でありました。
托鉢からもどられた和尚が縁側に腰を下ろしてわらじのひもを解いておられました。
若い雲水(修行僧)であった自分が井戸端にとんでいって、つめたい水をたらいに汲んできて和尚に差し出しました。
和尚が気持ちよさそうに足を洗い終わって自分の部屋へ向かわれたのを見て、使い終わったたらいの水を何気なく庭に捨てました。
そのとき、和尚が振り返って「ばか者、殺生するな!』と言って部屋に入っていかれたというのです。
一喝された雲水は、いくら考えても叱られた理由が分かりません。まだ修行が浅いからその意味を理解することができないのだと考えて、恐る恐る和尚の部屋を訪ねて、「先ほど、お叱りを受けましたが、どうしてもその理由がわかりません。
さぞ深いお考えがあってのことと思われますので、ぜひその訳を教えていただきたい」と申し上げたところ、
和尚は「足を洗った水を庭先に無造作に捨てたからだ。たとえ用がすんで捨てる水でも、植木にかけてやれば植木も喜び水をもう一度生かせるではないか。一滴の水でも生かして使え」
と諭されました。これを縁として「滴水」という名をつけてもらったというのです。
見真
龍谷総合学園 (著)
本願寺出版社; 第三刷版 (2003/03)
P18
我より勝れるの人を思え [倫理]
今時の若い者 [倫理]
十三徳 [倫理]
第一 節制 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。
第二 沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
第三 規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
第四 決断 なすべきことをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
第五 節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。
第六 勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
第七 誠実 偽りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に功正に保つべし。
第八 中庸 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
第十 清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
第十一 平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
第十二 純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためのみに行い、これに耽りて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。
第十三 謙譲 イエスおよびソクラテスに見習うべし。
フランクリン (著), 松本 慎一 (翻訳), 西川 正身 (翻訳)
フランクリン自伝
岩波書店 (1957/1/7)
P157
大山寺
父からの教え [倫理]
一六 父(39)からは、温和であること、熟慮の結果いったん決断したことはゆるぎなく守り通すこと。いわゆる名誉に関して空しい虚栄心をいだかぬこと。労働を愛する心と根気強さ。公益のために忠言を呈する人びとに耳をかすこと。各人にあくまでも公平にその価値相応のものを分け与えること。いつ緊張し、いつ緊張を弛めるべきかを経験によって知ること。少年への恋愛を止めさせること。 公共的精神。~中略~
倦怠もしなければ夢中になりもせず友人を持ちつづけること。あらゆることにおいて自足することおよび快活さ。はるかかなたを予見し、悲劇的なポーズなしに、細小のことに至るまであらかじめ用意しておくこと。 ~後略(住人注;を教えられた)
マルクス・アウレーリウス 自省録
神谷 美恵子 (著)
岩波書店 (2007/2/16)
P17