軽々しく「ガンバレ」って言うな [ものの見方、考え方]
「 アナウンサーによくいるんだけど・・・・
本当にガンバッている人に向かって、気軽に[ ガンバッてください ]なんて言う。
ああいうアナウンサーは首を絞めてやりたい 」
永 六輔
伝言
岩波書店 (2004/2/22)
P86
人間は立ち上がれる余力と気力があるときに励まされると、再び強く立ち上がることができます。
ところが、もう立ち上がれない、自分はもうだめだと覚悟してしまった人間には、励ましの言葉など上滑りしてゆくだけです。
「がんばれ」という言葉は戦中・戦後の言葉です。私たちはこの五十年間、ずっと「がんばれ、がんばれ」と言われ続けてきた。
しかし、がんばれと言われればP081
「頑張る」という言葉は悪い言葉でね、これを別の言葉で言うと、「目的のために心身に無理をさせろ」ということです。
「頑張れ」は「無理をさせろ」ということですから、「頑張る」は長くしたらだめなのね。
でも、火事で逃げるときは頑張らにゃ。「自分の生体に無理のかからない速さで、火事場から逃げましょう」とか言って、焼け死んでしまったらだめだから、緊急事態には頑張るということもある。無理した分は、あとで休息して休む、これが必要です。ずうっと頑張り続けるのは全然だめね。
これは八木剛平先生(「精神科における養生と薬物」診療新社)との対談のときに聞いたんだけど、ターミナルケアでは「頑張る」という言葉は禁忌になっているらしいね。いいことだと思う。「頑張る」という言葉はホスピスでは使っちゃいけない。「さあ、無理しなさい」と言ったって、もう死にかかってるんだから、ガンの人に「頑張れ」なんて言っちゃいかん。
言われるほど辛くなる状況もないわけではありません。
五木 寛之 (著)
他力
幻冬舎 (2005/09)
P293
P212
中国の「加油」と言うのは、「フレーフレー」という意味なんだよな。これはちょと足し方が多いような気がするな。
だけど日本語の「頑張れ」と言うのはもっと悪い。「頑張れ」という言葉を日本から追放するのはなかなか難しい。
だけど、そうか、追放せんでいいんだ。過去形でやるといい。
アフガニスタンでペシャワール会の伊藤和也さん(二〇〇八年八月、アフガニスタン日本人拉致事件の被害者)が殺されたときに、同僚や家族の人が「お前はよく頑張ったね、と言ってやりたい」と語っておられました。だから過去形はいいんだよ。「よく頑張ったね」と言うのはいい。
だけど、「よく頑張った。さらに頑張れ」と言うのは、いかん。オリンピックで賞をもらった人は不幸だよ。あとに地獄が待っている。「この次はもっと頑張って、色の違うメダルを取って」とか、可哀想になあ。
神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
しばしば「がんばる」といった言葉が安売りされるが、がんばってどうにかなるほど単純な世界に我々は住んでいない。がんばろうにも方法がわからなかったり、方向性が定まらなかったり、客観的に見て自分はがんばったことになるのか判然としない―むしろそんなシチュエーションのほうが多いからこそ、我々は途方にくれ、困惑し、さもなければ溜め息をつかざるを得ないのではないのか。
「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
春日 武彦 (著)
医学書院 (2007/07))
P016
「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
- 作者: 春日 武彦
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2021/03/09
- メディア: 単行本
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