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安さだけではない新たな価値観 [社会]

  「価格の問題は、防衛問題と似ている」と八尋さんは言う。
「世の中には、護憲派も改憲派いる。結局は武力に対する見方の相違だけど、武力を否定する護憲派にしても、いざというときの対応策を示さないと説得力がない」
「農薬だってそう。農薬は悪いから減らせとは誰だって言える。でも、農薬を使わなかったらどうすんだと問い返されたときの答えがないから、結局、かけ声だけで終わる。問題をあぶり出しただけじゃ駄目なんだよね。記憶が薄れたら、また元に戻るだけだからー」

 米国の尾金融危機から派生した世界的不況は今後も続くだろう。所得格差も広がる中で、いかに暮らし方を考えてゆくか。安さだけではない新たな価値観と、私たちの生活を守る具体的な技が求められると考える。


食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側
西日本新聞社 (2009/09)
P42

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P57
「生活するとは、買うことじゃなく、つくり出すこと。その姿勢が、食だけでなく、すべてに通じる「生活防衛術」ではないでしょうか」

買うことしか考えない間は、物を売りたい企業に踊らされ続ける
P57
実は、日本人が多様な食文化に触れる出来事が70年にあった。半年間で、博覧会史上最高の6400万人が来場した「大阪場万博」だ。
めったに味わえなかった各国の味に長蛇の列ができた。アメリカ館を担当した外食企業「ロイヤル」が、福岡で調理したものを大阪に運ぶ「セントラルキッチン方式」で大量調理の効率化に成功。以後日本ではファミリーレストランやファーストフード店、コンビニが急増した。
魚柄はこう分析する。
「万博から食のバラエティー化、外部化が進んで、20世紀終りには、いつでも、どこでも、どんな食べ物でも、安く、簡単にてに入るようになった。万博は、日本の食文化の転換点でした」
 未来志向の空気の中、ひもじい時代を支えた「家庭料理」の知恵は、見向きもされなくなった。
それから30年以上過ぎた今。日本人に「生きる底力」が感じられないと、魚柄は危惧する。
消費期限・賞味期限がないと「食べられるか」見極められず、安全は作る側、売る側に求めてばかりの人。食費がかかると嘆きながら、買い物の無駄や食べ方を見直せない人。お金が必要なのにコンビニで稼ぎを使い切る人・・・」
「買うことしか考えない間は、物を売りたい企業に踊らされ続ける。昔は、手に入るものを上手に食べる知恵があった。それは、震災のような非常時を生きる知恵でもある。今こそ、食を自分の手に取り戻しませんか」

食卓は、社会と密接につながっている
P64
「賢い主婦はスーパーで手前に並んでいる古い牛乳を買う」。06年秋、新聞各紙に、日本新聞協会のこんな啓発広告が載った。
古い牛乳が残り、廃棄が常態化すれば、供給側はその分を価格に反映させざるを得ない。もし、できなければ、質を落とすかあるいは・・・。
台所で食べ物を腐らせず上手に扱うことは、個々の生活を守る上で重要だが、その一方で家庭の食卓は、社会と密接につながっている。
どこで、何を、どんなふうに買うか。やはり買い物は日々の中で社会に”一票”を投じる行為である。

P68
生産者価格を破壊して売る流通が悪いのか、それを求める消費者が悪いのか。それは「卵とニワトリ」の関係かもしれない。
ただ、農家人口の2/3が六十代以上となった中、片方を喜ばせるためにもう片方が泣くような商法は近い将来、食の安定供給という、量の安心・安全を崩壊させるだろう。

「買って守る」消費者に
P71
消費者にできることは、できる範囲で良質な食を買って守ること。調味料だけでも少し上質のものを選ぶ、外食のときは信頼できる店を選ぶ、菓子を減らして元気な野菜を買う回数を増やす・・・など、具体策はライフスタイルに合わせて、それぞれが模索するしかないだろう。
~中略~
食の安全・安心の問題は根深いが、手が届く範囲から人と人のつながりをはぐくめば、健全な食に少しずつ近づけるということではないか。
信頼できる店や人を見るけることが、良質な食や生産者を買い支える初めの一歩かもしれない。

長期企画「食卓の向こう側」第12部として、身近な食べ物の価格から生産現場の実態を報告した前半(08年12月16-25日)、「私たちの生活防衛術」と題した後半(09年二月17日~25日)

食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側 (西日本新聞ブックレット)

食卓の向こう側〈第12部〉価格の向こう側 (西日本新聞ブックレット)

  • 作者: 西日本新聞社「食くらし」取材班
  • 出版社/メーカー: 西日本新聞社
  • 発売日: 2009/09
  • メディア: 単行本



 

 
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