希望を持ったまま保留 [処世]
玄侑 ユングが言っていることですごいなと思うのは、一つのことが起こりますよね。起こったことそれ自体では縁起がいいか悪いかわからない。
たとえばここにお金が落ちてたとしますよね。縁起がいいって思って拾ったら、テーブルの角に頭をぶつけて脳震盪で入院した。
やれやれ、まいったと思ったら、入院した病院の看護婦さんがきれいな人だった。それで、結婚したら、なんだかしりに敷かれちゃって、こんなはずじゃなかった、と(笑)。
二転三転するわけですよね。すると、お金が落ちてること自体が、いいことかどうかなんて、わからないわけですよ。
だから希望を持ったまま判断を保留しなさいとユングは言うわけですね。
最初に起こった出来事を保留にしないで悪い方向に考えると、それが次に起こることに影響する。
この「希望を持ったまま保留」っていうのがすばらしいと思いますね。「希望の原型」って言いますけど。
養老 孟司 (著) 玄侑 宗久 (著)
脳と魂
筑摩書房 (2007/05)
P272
コメント 0