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うつ病の大衆化 [医療]

 昔(といっても八〇年代だが)の教科書には、若者はうつ病になることは少なく、中高年がかかりやすい病気である、と書かれていた。しかし最近うつ病は各年代に広がっている。これは日本だけの現象でない。~中略~
最近のうつ病患者の特徴として、以前と比べて軽症うつ病が増加していることに気がつく。
~中略~

そして中には、軽症うつ病よりも抑うつ感がもっと軽い、うつ病と診断してよいのか迷うケースも増えてきた。
~中略~
 このようなケースに対して最近は、「現代型うつ病」「非定型うつ病」「新型うつ病」「会社だけでのうつ病」「自己愛型うつ病」といったネーミングの下に、論考されるようになった。

冨高 辰一郎 (著)
なぜうつ病の人が増えたのか
幻冬舎ルネッサンス (2009/7/10)
P23

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最近は、「非定型」うつ病が特に若い世代の女性に増えていると言われます。その特徴は、過食や過眠など、典型的なうつ病とは異なる症状を呈することです。
また、普段は何もする気力が湧かないにもかかわらず、何か楽しいことがあると一時的に気分が好転し、元気に活動できるという傾向もあります。
この非定型うつ病は。「新型うつ病」「現代型うつ病」だどとも呼ばれています。

大切な人の「こころの病」に気づく 今すぐできる問診票付
日本精神科看護技術協会 (著), 末安民生 (著)
朝日新聞出版 (2010/11/12)
P77

 

うつ病になりやすい性格(うつ病の病前性格)については、従来から次の2つの病前性格が知られている。
 まず、「メランコリー親和型性格」であり、これは、協調性が高く、「相手がいて自分がいる」という考え方が優先されるタイプである。
社会や会社のルールに従って生きるのが好きだし、安心する。冒険やチャレンジよりも、レールに乗った生き方が好きなタイプである。そのため、人からは「いい人」と言われることが多い。
 もうひとつの「執着気質」とは、完全癖が強く、最後までやり通すようなタイプである。また、執着心が強く、感情の高まりが続くのが特徴的である。いわゆる「真面目な人」である。
 しかし、最近、この10年くらいの話であるが、「新型うつ病」という病態が現れた。この「新型うつ病」の症状とは、確かに無気力・回避的であるが、夕方5時以降は元気になり、休日は元気なようなのである。
そのため「社内うつ」という言葉もあるようだ。そして、この新型うつ病は、休養が必要だという診断書が出ると元気になり、旅行にも行くようなのである。
~中略~
 この「新型うつ病」の場合には、病前性格として、かなり自己愛的であるという特徴が指摘されているのだ。その自己愛が傷つけられた時に発病し、その際、他罰傾向が強くなると言われいる。
 つまり、上司が正しい理由があったにせよ叱った場合にはm、ひとまずは叱られたことで傷つき、逆に「上司が悪い」と責め立てるのである。
彼らには、自分なりの規範があるので、その規範から外れたことが起こった時には、周囲や上司や先輩がいけないということになり、そのために自分は会社に来られなくなったと説明するのである。
実際、メンタルクリニックから「うつ病」という診断書が出てくると、認めないわけにはいかなくなってしまう。会社として、病気と認めるかどうか迷ってもしかたのない事例ではあるが、学問的にも、この病態についての考え方は議論がある。
 ※従来指摘されていた「逃避型抑うつ」、「現代型うつ病」、「ディスチミア親和型うつ病」のほとんどは「新型うつ病」と言われている。また、米国の診断基準であるDSMや、国際的な診断分類であるICDで言われている「ディスチミア(気分変調症)」と、ほぼ同じとも言われている。 慢性的な軽度のうつ状態で、日本で従来言われていた「神経鞘性うつ病」や、「抑うつ神経症」なども、この新型うつ病に含まれるだろうとも言われている。
 さて、やや乱暴な私見ではあるが、私はこの「新型うつ病」とは、ゆとり世代・センター試験で育った「もろい若者」と、診断基準による診断術で研修を終えた「未熟な精神科医」が創作した新しい概念であるという可能性を考えている。そして、ネットを通じて、疾病利得(しっぺいりとく)に関する情報が、若者世代に浸透していった可能性についても否定していない。
 実際、
 「○○の症状を言って、うつ病かもしれないので、休みたい、といえば、メンタルクリニックでは診断書を書いてくれるよ」 という2チャンネル記事も大いに受けているそうだ。

空海に出会った精神科医: その生き方・死に方に現代を問う
保坂 隆 (著)
大法輪閣 (2017/1/11)
P98

 新型うつ病には、抗うつ薬の効果が乏しいと言われています。また、従来のうつ病に対する「励まさない」「お尻を叩かない」といった対応は、この場合はあまりうまくいかないとも指摘されつつあります。薬物療法がまったく無効なわけではありませんが、薬物療法とともに、本人の考え方や捉え方の特徴について整理するような心理療法(時に指導的・教育的な関わりも含む)、職場環境面のちょとした工夫、また本人と周囲が正しい疾患理解を進めていくことなどで症状の改善が認められるケースを私たちは経験しています。

精神科医はどのように話を聴くのか
藤本 修 (著)
平凡社 (2010/12/11)
P164


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