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発達障害 [言葉]

  発達障害はけっして珍しいものではありません。ある統計では、一五歳未満の子どもの一割以上が何かしらの発達障害の症状を示すという結果も出ています。そして、その多くが、発達障害であるとは気づかないまま大人になっていくのです。
 「障害」という日本語が誤解を与えがちですが、この症状は知能の発育にのみ関係するものではなく、勉強の成績がトップクラスの子の中にさえ、発達障害の子はいます。

発達障害に気づかない大人たち
星野仁彦 (著)
祥伝社; 新書判版 (2010/1/30)
P3

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)

  • 作者: 星野仁彦
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/01/30
  • メディア: 新書


-c1308.jpg萩町城跡からの白川郷2

P29
 具体的に言うと「中枢神経系(脳)の発育・発達が、なんらかの理由(遺伝、妊娠中・出生時の異常、乳幼児期の病気など)で、生まれつき、または乳幼児期期に損なわれ、言葉、社会性、協調運動、基本的な生活習慣、感情や情緒のコントロールなどの発達が、未熟、アンバランスになるために起こる」と考えられています。
中略~ごく大雑把に言えば、脳機能の発達の凸凹(偏り)が原因であり、一次的には家庭環境や本人の性格などは関係ありません。あくまで本質的な原因は脳であり、心の問題ではないのです。

P152
 発達障害の詳細の病態は、実はよくわかっていません。
 しかし、発症のメカニズムとしては、家庭の養育環境や心的外傷体験(トラウマ)などの環境要因や心理的要因で起こるのではなく、明らかに生まれつき、もしくは出産前後に脳機能損なわれることによって発症することが確認されています。
 ただし、本来の(一次的)原因はあくまで脳の障害ですが、二次的にはしばしば心理社会的要因によって悪化したり、二次障害や合併症を示すことがあります。

P84
 大人の発達障害者が、交通事故や産業事故、水難事故などを起こしやすいのは臨床的によく知られた事実です。
~中略~
 近年、日本では飲酒運転で死亡ひき逃げ事故を起こすなど悪質な交通事故が増え、さらなる厳罰化を求める声が少なくありませんが、事故の背景に発達障害があるとすれば、いくら厳罰化を進めたところで、事故の抑制効果には自ずと限界があります。
~中略~
発達障害者は一般に睡眠効率が悪く、七~八時間寝たと思っても、実際には眠りが浅く、四~五時間しか睡眠が取れていません。
~中略~
 発達障害者に交通事故や産業事故が多いのは、身体症状の特性に加え、睡眠障害が大きく影響しているのです。

P106
 そもそも成人女性にはADHDやASは存在しないとされ、医師が診断することもほとんどなかったのです。女性にも大人の発達障害が少なからず存在することがわかり、世の中の注目を集めるようになったのは一九九〇年代に入ってからです。
~中略~
 彼女たちは、不注意傾向が強く、家事や雑用―つまり、掃除、洗濯、炊事、整理整頓、買い物、電話や来客の対応、育児、親の介護など―を順序だてて、要領よくこなすことができません。
 また、金銭、時間、書類などの管理も苦手です。

P172
ほとんどすべての発達障害者は、自分のさまざまな問題行動や精神疾患は、自分の性格や努力不足、家庭環境やトラウマのせいだと思っています。
 このため、「どうせ自分はダメな人間だ」と著しく自己評価や自尊心を低下させたり、「自分がこうなったのは親のせいだ」とか「いじめたあいつらのせいだ」などと周囲の人に怒りや憎しみを向けてしまいがちです。
その結果、ますます周囲との軋轢がひどくなり、二次障害や合併症を発症する悪循環に陥り、いっそう問題を深刻なものにしていきます。

P228
 発達障害のある人は、磨かれていない原石です。
 彼らは、脳の発達がアンバランスで、物を片づけたり、約束の時間を守ったり、メールをもらったら折り返し返事を出すなど、ふつうなら誰でもできることができずに職場や家庭などでしばしば大変な苦労を強いられます。
 しかし、その一方で彼らは、多くの素晴らしい長所も持っているのです。
~中略~
 実際、歴史に名を残す偉人や天才には発達障害を抱えていたとされる人物が多く、音楽家のベートーヴェンやモーツァルト、科学者のエジソン、アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、画家のピカソ、ダリなどはその典型と言われています。

>>>発達障害  

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)

  • 作者: 星野仁彦
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/01/30
  • メディア: 新書


 偉人と呼ばれる人が、偉人であると同時に人間的にも立派であったと断定する根拠などどこにもない。
 その偉人はひょっとしたら、世間一般の大人になりきれなかった人間、ただの子供のままだったがゆえに偉大な業績を残すことができたのかもしれない。
 あるいは、時代の流れや年齢ごとにころころと色を変えるカメレオンみたいな変幻自在の人間だったから、時代に沿った仕事をなしたのかもしれない。
 あるいは、魔法にかかった少女のように、途方もない非現実的な夢の中に行き続けたからこそ独特であったかもしれない。
「悦ばしき知識」

超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦 (翻訳)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/1/12)
116

超訳 ニーチェの言葉

超訳 ニーチェの言葉

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/01/12
  • メディア: 単行本


P027
 ですから、過去の偉い人、歴史に残るような立派な人と言われている有名人が、実は境界型だったという論文は、必ずしも正しくない。むしろ才能がとても豊かだったために、センスがよすぎたために、その人が理解してほしいと思ってだすコミュニケーションが、向こう側から誤解されて、何か訳分からんようになってしまっていたのかもしれない。対人関係も多数決だから、「自分は誰からも理解されない」というようになると、この才能豊かな人は朽ち果ててしまう。
~中略~
 今言ったこともそうですが、境界例の人の治療で、ボクはいつも
「あなたは周りとセンスが合わんのよ。もう諦めんね。周りの世界とは嘘のつながりにして、自分のほんとの世界というのを内側に作っていくようにしたらどう?あちこちいっても、なかなか分かってくれる人はおらんがね」
というようなことを言うようにしています。
 それは境界例の人たちの不安定、厄介さの原因は、自分とピタッと通じあえる相手を求めているからだと思うからです。

P029
〔二〇一三年追想〕
 最近ボクは「境界例」というラベルを使わなくなった。これまでの「厄介な人々」を、「発達障害」「軽症の双極性感情障害」「医原症」あるいはその三つの複合状態と診断するようになった。すべて、治療方針を内包する診断ラベルであり、これで診療がしやすくなっている。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)

神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 作者: 神田橋 條治
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本



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