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仲間と一体であるという安心感 [社会]

 ニホンザルは、仲間が自分から空間的に離れた時に、むしろ声を出し合うことがわかる。そうすることで姿は認めなくても、相手が自分の周辺にいることを確認しているのだろう。
彼らが生活する森のなかは視界がよくない、へたをすると仲間からはぐれてしまう危険が存在する。それを防ぐためにおしゃべりが役に立っている。
自分が声を出して応答があることで彼らは仲間と一体であるという安心感を得ているらしい。

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊
正高 信男 (著)
中央公論新社 (2003/09)
P66

 

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

  • 作者: 正高 信男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 新書
-8a257.jpg金剛輪寺 明寿院

P119
 現代の日本人は若者を中心として、過去のような対人関係を営むことが難しくなってきている。このような風潮は、「関係できない症候群」の蔓延と呼んでも差支えないだろうと私は考えている。

その背景にあるのは、社会の高度情報化、端的にIT化にほかならない。それを象徴化するのがケータイの流布である。
 ケータイを使いだすと、常に身につけてないとどうも不安な気分に陥ってくる。
「常につながっていないと気が安まらない」という感覚ーそれは、私たちがコミュニケーションの媒体そのものの共有という事実にもとづいて、集団としての連帯を確認するようになってきたことを示唆している。ともに同じホームページにアクセスしているとか、同じアイドルの情報を共有しているとか、そういうことのみで一体感を味わうのである。

 

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

  • 作者: 正高 信男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 新書

 

 

P125
すねたりいじけたりしている人は、治療者が「鏡」として機能しようとしても、「理想化」として機能しようとしても、素直に乗ってきません。
 たとえば、相手の話を聞いていれば、「ここで褒められたいのだろう」と思うポイントが出てきます。
ところが、そういう人は、そこを褒めてあげても、「先生は仕事でやってるからそんなお世辞をいうんでしょ」と思ってしまう。これでは、治療者を鏡自己対象として体験できず、したがって自己愛も満たされません。
 また、こちらが理想化自己対象として機能しようと振る舞い、「私がついているから大丈夫ですよ」などと不安を解消しようとしても、安心感を得るどころか、ひがんでしまう人もいます。
「そんなことをいわれても、自分みたいな人間はエリートのお医者さんとは違うから」というわけです。
 では、このような患者にはどんな心理ニーズがあるのか。そして、それはどのようにすれば満たすことができるのでしょう。
 コフートがたどり着いたのが、「双子」の概念でした。
 前述したとおり、「鏡」や「理想化」で自己愛が支えられないのは、その自己対象が「自分とは違う種類の人間だ」と思ってしまうからです。
つまり、自分が「他人とは違う」ことで自己愛が傷つき、拗ねたりひがんだりしている。なので「自分が人と同じ人間だと思いたい」という心理ニーズを満たしてあげる必要があるのです。
~中略~
コフートは人間には「他人と同じでありたい」という根源的な欲求があることに気づきました。コフート理論を「自己愛の心理学」だと考える人はあまりここに注目しないのですが、私はこれこそがコフートの大発見だったと思います。

P129
 ちなみにこのような「双子感」が役に立つのは、一対一のカウンセリングだけではありません。
たとえばアルコール依存症の人たちが集まる「アルコホーリクス・アノニマス(AA)や断酒会、ギャンブル依存症の人たちの集まる「ギャンブラーズ・アノニマス(GA)」と呼ばれる自助グループにも、そういう効果があります。
 前述したとおり、「一人でいること」が依存症の共通点ですから、患者たちはふだん同じ苦しみを抱えている人に会っていません。つまり、深い疎外感を抱いている。でも、AAや断酒会やGAに行くと、「こういうときに、つい飲んでしまうんですよね」とか「ギャンブルをやめられない自分がイヤになります」といった告白を聞くことで、「自分だけではないんだ」という安心感を得られるのです。

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

自分が「自分」でいられる コフート心理学入門 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 新書

 


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