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エネルギーと現代社会 [社会]

 今回あらためて試算すれば電力の三割を節約することは可能だという話はあちこちから出てきている。だからといって現実に三割の電力を節約して原発はなくそうという方向にいくかといえば、事はそう簡単ではない。
~中略~

一九八〇年代後半以降、CO2の排出量と、GDPは、完全にパラレルになっている。
CO2の排出量はエネルギー消費量に比例するわけで、要するに、エネルギーを使わなければ景気が悪くなるし、景気をよくするためにはエネルギーを使わなければならないという構造になっている。

ほんとうの復興
池田 清彦 (著), 養老 孟司 (著)
新潮社 (2011/06)
P110

ほんとうの復興

ほんとうの復興

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/14
  • メディア: 単行本


TS3E0344 (Small).JPG到津の森公園

P114
 バイオエネルギーにしても、ソーラーパネルをつくるにしても、新エネルギーの開発は全部、石油に依存している。
つまり石油がないと新しいエネルギーの開発もできないというのがいまの現実です。
略~いまのうちにむしろ石油をたくさん使って、それで新しいエネルギー生産のための仕組みを立ち上げた方がいいはずでしょう。
池田 清彦

P148
 具体的な損失を挙げれば、まず事故を収束させるために支払った費用がある。次いで、これからどれだけ続くかわからない立入禁止地区にからむ経済的損失、放射能汚染のため農業や漁業が行えないことから発する損失、観光業に対する打撃、輸出の停滞から生ずる損失、これらすべての複合として生じるGDPの伸び悩みあるいは下落等々、これらを勘定に入れれば、結果的に原発で得た利益よりも失った損失の方が大きいのではないかと思わざるを得ない。

原発を止めると電気料金が上がって日本は経済的に停滞すると、いまだにノウテンキなことを言っている人もいるが、どんなに安全だと言い繕ってみても、地震大国日本で想定外の大地震が起きて、原発事故が起こる確率はゼロではない。
むしろ一〇〇年、二〇〇年というタイムスケールで考えれば、これはほとんど不可避の出来事だと考えるべきだろう。
~中略~

 今、政府がやるべきことは、すべての原発を将来的に廃炉にするという決定をして、具体的な工程表を作ることだ。
しかし、そのためには代替エネルギーをどうするかを考える必要がある。

P168
 風力発電や太陽光発電はどんなにうまくいっても、合わせて全電力量の五パーセント以下の発電能力しか持ち得ないだろう。この二つに過度の期待をして補助金を注ぎ込むのは止めた方がよさそうだ。
~中略~

日本の潜在資源として期待できるのは地熱、バイオマス(藻類)、メタンハイドレートの三つであり、さしあたってはこの三つの資源開発に全力を注ぐべきと思われる。
~中略~

 逆にいえば、このあと五〇年の間に、地熱、バイオマス、メタンハイドレート等の大規模開発がすべて不首尾に終われば、石油、石炭、天然ガスが枯渇した時点でエネルギー消費の上に成り立つ現在の社会システムは日本のみならず世界的にも崩壊を余儀なくされるということだ。
もっともそれまでに核融合発電が実用化されれば話は違ってくる可能性がある。
~中略~

 いずれにせよ、マクロに見ればエネルギー量が世界人口と生活水準を決めることは間違いなく、人類の未来は、新エネルギーの開発いかんにかかっていることは確かである。
もちろんそれは、利用可能なエネルギー量が多ければ多いほど、種としての人類の絶滅確立が低くなることを意味しない。
むしろ事態は逆になる可能性の方が高いかもしれない。
池田 清彦

 

ほんとうの復興

ほんとうの復興

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/14
  • メディア: 単行本



 私ども日本人は、ほんの百十数年前まで、木材で暖をとり、煮たきし、また菜種油を灯心にしみこませて夜のあかりにしていた。エネルギーは、それだけですんだ。人力や牛馬の力以外にエネルギーがあったとすれば、水車ぐらいのものであった。その記憶は、たれもの胸の中で詩になっている。
 そのくせいまはエネルギーに飼いならされてしまい、いまや人類の生命そのものを託してしまっている。
「エネルギーがなくなったら、人類は死滅するでしょうね」  と、十数年前、対談のときそういわれたのは向坊隆(むかいぼうたかし)博士だが、その後、私は人類のはしくれとしてそのことがずっと気がかりだった。

アメリカ素描
司馬 遼太郎(著)
新潮社; 改版 (1989/4/25)
P42

 

アメリカ素描 (新潮文庫)

アメリカ素描 (新潮文庫)

  • 作者: 遼太郎, 司馬
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/04/25
  • メディア: 文庫




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