君子 [言葉]
<君子>君は群に通じ、子は尊称で、朝廷の会議に参列できる貴族たちの総称が原義である。
周から春秋時代にかけては、これら貴族にふさわしい教養、品位のことをさすようになる。これを「紳士」とか「お人柄」「人物」と訳する。
春秋末期の下級氏族出身の孔子は、この貴族的な理想を一般化し、貴族に代わる新興知識階級のための新しい理想の人間像を形成した。
この意味の「君子は」、「学者」「人格者」「求道者」などと訳する。場合によってニュアンスがちがい、いろいろな訳語をつかわねばならないので、君子の語を訳さずにそのままでつかうことが多い。
学而篇
論語
孔子 (著), 貝塚 茂樹
中央公論新社 (1973/07
P9
「論語」のなかでは「君子」ということばが、さんざん使われている。「君子人カ、君子人ナリ」といったように、孔子のえがいた理想的哲人を現す語であったようである。しかし、「論語」は政治哲学の匂いが濃い。
したがって「君子ハカクアルベシ」と孔子がいう場合、ズバリいえば「役人はカクアルベシ」ということなのだ。
美称でいえば牧民者、実質的には中国の古代サラリーマンの倫理要綱であり、処世術なのであだ。
だからこそ「君子、アヤウキニチカヨラズ」などと、まるで卑俗な明哲保身の術を教えているのである。
司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10
司馬遼太郎 (著)
新潮社 (2004/12/22)
P67
司馬遼太郎が考えたこと〈1〉エッセイ1953.10~1961.10 (新潮文庫)
- 作者: 遼太郎, 司馬
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/12/22
- メディア: 文庫
「孟子」(梁恵王上篇)、は「恒産(こうさん)(一定の財産)がなくても恒心(こうしん)(心の安定)を失わないのは、君子だけだ」(恒産無くして恒心有るは、惟(これ)士のみ能と為す)といっている。
石田梅岩『都鄙問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ14)
石田梅岩 (著), 城島明彦 (翻訳)
致知出版社 (2016/9/29)
P150
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