三徳山三仏寺投入堂 [見仏]
奈良、京都と古寺巡礼を続けて、数十の名建築を見てきたが、投入堂のような軽快優美な日本的な美しさは、ついに三仏寺投入堂以外には求められなかった。
わたしは日本第一の仏像は?と問われれば、銅造ならば薬師寺東院堂の聖観音立像、木造ならば神護寺混同の薬師如来立像をあげることは予(か)てからの持論だが、日本第一の建築は?と問われたら、三仏寺投入堂をあげるに躊躇しないであろう。
ほかに塔ならば薬師寺三重塔、楼閣ならば平等院鳳凰堂をあげなければならないが、三重塔や鳳凰堂は見飽きないともかぎらない。
しかし簡素な素木造りの投入堂は、周囲の懸崖の季節、時間の変化と相まって、見飽きる虞(おそれ)はなさそうである。~中略~
ただ投入堂を眺める場所に到達するのが容易でないだけである。
古寺を訪ねて―東へ西へ
土門 拳 (著)
小学館 (2002/02)
P158
三徳山三仏寺投入堂
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