料理の初歩 [教育]
私をも含めてそのころ教えられた料理の初歩には、要点が二つしかない。
一つはまっとうな味を知ること、つまりいかに正しく料(りょう)るか、も一つは厳しく腐敗のもの、毒のものを知ること、つまりいやなものを排除すること、
この二つであった。
~中略~
このごろは中毒事件が多い。毒になるものをたべさせるほうの業者たちはもとより心臓が麻痺していると見るが、食べるほうの子供たちはいったい腐敗について教えられたことがないのだろうかと訝(いぶか)しいのである。
もし毎日三度たべるたべもので、腐敗の味や臭いや感覚を教えられていない結果がこうした中毒になるのだとすれば、中毒の一半の責任は親たちにもあると思う。
いいおいしいたべものもいいが、子どものときから腐敗のもの、毒になるものについて厳しく教えるのは必要だとおもう。
(一九五四年 五十歳)
幸田 文 (著) , 青木 玉 (編集)
平凡社 (2009/3/5)
P26 藤松小学校
タグ:幸田 文
コメント 0