職人 [雑学]
宇和島藩にすれば、蔵六に黒船もつくらせ砲台も設計させるというのでは、蔵六のために負担が重いだろうとおもい、蒸気機関については別の人間を物色していた。
家老松根図書は、
(御家中にはひとりもいない)
と、あたまからきめこんでいた。武士というのは規則と作法ずくめの環境であたまがかたくなっており、あたまの梁や柱をたたき折って想像をそとへひろげるという力をもっていない、とみている。
そこへゆくと職人であった。
職人はたえず手足の実感で物をつくっており、その実感のなかから蒸気機関を想像することはできないかとおもった。
花神〈上〉
司馬 遼太郎 (著)
新潮社; 改版 (1976/08)
P210
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