ムスリム [国際社会]
イスラームというのは、「唯一」の「絶対者」である神(アッラー)に全てを預け、アッラーの定めたとおりに従うことを言います。唯一神であるアッラーに全面的に服従する、あるいは帰依すると言ってもかまいません。
そして、イスラームする人のことをムスリムと言います。
ムスリムになるには、この一点だけを信じればよいのです。実際、イスラームに入信するときに行う信仰の告白は、「アッラー以外に神はなし、ムハンマドはアッラーの使徒である」と心の底から唱えるだけです。
面倒な戒律のたぐいを知っている必要もありませんし、コーランを読んでおく必要もありません。
ただ、一点、アッラーが唯一の全能の神であること、そのアッラーに全てをゆだね、その教えに従うと誓うだけのことです。
イスラームから世界を見る
内藤 正典 (著)
筑摩書房 (2012/8/6)
P16
P63
ムスリムは、国境線で仕切られた領域の中に生きているわけではありません。国境をまたいで、隣の国にも暮らしていることなど、いくらでもあります。どこにいても、ムスリムとしての絆があり、それはしばしば民族や帰属する国の国民としての絆よりも強くなります。
P120
佐藤 ~前略
一連の「アラブの春」では、ほとんどの国で、「ムスリム同胞団」という反政府勢力の名前が聞かれました。これはエジプト出自の組織です。新聞は、穏健派だと書きますが、この種の組織の性格上、穏健派と過激派の線引きはむずかしい。
池上 創始者は、エジプトの中学教師ハサン・アル=バンナです。彼が一九二八年に創始した組織です。
彼はアメリカに留学中、自分がイスラム教徒であることに目覚めます。そして預言者ムハンマドの頃の古き良き時代に戻ろう、みんなが平等なイスラム国家を建設しよう、とムスリム同胞団をつくりました。~中略~ 一九八一年、ムスリム同胞団は、エジプトのサダト大統領暗殺事件を起こし、跡を継いだムバラク大統領に非合法化され、徹底的に弾圧されます。それ以降、同胞団は、地域の医療活動や慈善活動の団体として生き延びてきました。それが、アラブの春で一気に表に出て来たのです。
P220
佐藤 キリスト教のイエス・キリストのような媒介物がなくて、イスラム教は、神様と直結している。
すべてはアッラーと自分の関係なので、たとえば、約束の時間に遅れても、ムスリムは「ごめんなさい」とは言いません。
「アッラーを恨むな」と言う。「私が遅刻したのは、アッラーが遅れるようにしたからだ。「アッラーを恨むな」。こんな感じになります。
池上 なりますね。「明日午前八時にね」「オッケー」と約束しても、最後に「インシャラー」と挨拶されたら、「本当に八時に来るかどうかわかんない」と思わなければいけない。インシャラーというのは「アッラーが望むならば」という意味ですから。
新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方
池上 彰(著), 佐藤 優(著)
文藝春秋 (2014/11/20)
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