SSブログ

職場崩壊 [社会]

 ヨーロッパの人たちは、日本が「黒部の太陽」に「これぞ男!これぞ働く人間!」と感涙にむせんでいるときも、「会社より家族、自分」と気づき始めていたのだろう。 そしてようやくいま、その考えがじわじわと日本にも広まりつつある。
 ただ、それはまだ、「全員の常識」とはなっておらず、「終電で帰る派」と「とにかく家族や自分派」とが二極化しつつあるようだ。  そしてその二極化が、職場にちょっとした問題を引き起こしている。
 それは、「会社よりプライベート派」が増えつつあり、会社としても「自分や家族を大切に」という方針を進めようとしてはいるのだが、仕事の態勢がまだそうなっていない、ということだ。

 「プライベート優先派」は家族や友人にとっては心強い存在だが、「あ、オレ来週から育休だから」「あー、午後から大雨か。じゃ、午後半休取って帰るか」という人がどんどん増えても、仕事がその分、減るわけではない。
 それどころかこの時代、不況に伴い仕事の現場はますます厳しくなりつつある。顧客からの注文には、「ムリしてでも何とかやり遂げます!」とふたつ返事でオーケーしなければならない。
 そこで、二一世紀になってもまだ「黒部の太陽」を引きずっている上の世代や若者でも奇跡的に昔の会社観、仕事観を持っている人たちに、仕事の負担が集中しがちなのである。
そうなると当然のことながら、その人たちは働きすぎでいつもストレスを抱え、からだの不調を抱えたり、燃え尽き症候群、うつ病などの心の病に倒れたりする結果となる。

 では、その人たちを見て「プライベート派」は「よし、あの人たちばかりまかせないで、オレももう少し仕事をがんばろう」と思うかというと、それは逆だ。
「そうか、やっぱり仕事で無理しすぎるとああなっちゃうんだな。恐ろしい、オレはああならないようにもっと休みを多く取ろう」とますます自分や家族を大切にするようになる。

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか
香山リカ (著)
朝日新聞出版 (2012/12/13)
P173

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか (朝日新書)

若者のホンネ 平成生まれは何を考えているのか (朝日新書)

  • 作者: 香山 リカ
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/02/27
  • メディア: Kindle版

 

IMG_0031 (Small).JPG文殊仙寺


タグ:香山リカ
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント