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アルメニア人 [国際社会]

   アルメニアとトルコというと、一九一五年から一七年にかけて、いまのトルコがあるアナトリア半島からシリアやギリシャに追放されたときの悲劇が今も政治問題となっています。
そのころに「大虐殺」があったとアルメニア人側は主張しています。「大虐殺」を世界に認めさせようと強く主張しているのは、コーカサス地方にある小国のアルメニア共和国ではなく、全世界に散らばったアルメニア人たちです。
 アメリカやフランスには、この第一次世界大戦のときの悲劇から逃れた多くのアルメニア人がいまも住んでいます。 彼らから見れば、トルコは憎んでも憎み切れない「虐殺」の加害者の末裔ということになります。
~中略~
 この問題、おもに第一次大戦の最中の事件(十九世紀の後半からアルメニア人が犠牲となる事件は多発)なのですが、その当時、トルコを統治していたのは、形式上はオスマン帝国政府でした。しかし、もう崩壊寸前(千九百二十二年に滅びた後、トルコ共和国が一九二三年に成立)でしたので、実際には、エンヴェル・パシャをはじめとする軍人が実権を握って、第一次大戦にドイツ側について参戦していました。
彼らが、ロシアと共謀してオスマン帝国の寿命を縮めようとするアルメニア人たちの策謀を封じることを理由に、彼らを一斉にシリア砂漠に追放しました。これは間違いなく事実です。
~中略~
しかし、トルコ共和国の人たちからみると、前身のオスマン帝国を侵略し、支配をたくらんでいたヨーロッパ諸国が、この地域の民族のあいだにくさびを打ち込み、共存の歴史を破壊して憎しみに変えてしまったことが原因なのです。
~中略~
そして、フランスやアメリカの議会が「虐殺」を認定するということは、この問題がいまだにフランスやアメリカで政治的な意味をもっていることを示しています。
政治的意味とは、アルメニア人たちの経済的、政治的支持を集めることです。実際、アメリカではカルフォルニア州でアルメニア系の団体が力を持っていますので、大統領選挙など、大きな政治的イベントでは、必ず、アルメニア問題が持ち出されます。

イスラームから世界を見る
内藤 正典 (著)
筑摩書房 (2012/8/6)
P199

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  • 作者: 内藤 正典
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