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製薬会社は慈善組織でない [社会]

 米国精神医学会企業献金委員会のステファン・ゴールドフィンガー委員長はこう述べている。
「製薬会社にモラルを求めても無駄ですよ。慈善組織じゃないんですから。医師に繰り糸も付けずに大金を貢ぐなんてあるはずないじゃありませんか。~略」(マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ 製薬会社の真実」、邦訳・篠原出版新社)
 イギリス・カーディフ大学のデヴィット・ヒーリー教授(精神医学)は日本での講演で、あるエピソードを紹介した。
 ある製薬会社のシンポジュームに出席しようとしたら、その会社から手紙が届いた。手紙には「先生の負担を軽くするため、わが社のゴーストライターに原稿を書かせました」とあり、「ヒーリー論文の草稿」が添えられていた。教授の文章の癖まで盛り込んだ「力作」だった。
 ヒーリー教授が、草稿でなく自分で論文を書いたら、製薬会社は別の「筆者」を見つけ、医学雑誌に掲載された。 製薬会社は新薬を生産するだけでなく、その新薬を称賛する「学術論文」まで生産するようだ。
ヒーリー教授は、こうした「論文」代筆のほか巧みなCMにも触れ、ビッグ・ファーマはもはや医薬品会社というよりマーケティング会社では、と指摘している(2006年に開かれた薬害エイズ裁判若い10周年の講演)。

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ
別冊宝島編集部 (編集)
宝島社 (2013/4/22)
P90

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 大型本

 

DSC_0914 (Small).JPG両子寺

P91
 よく似た構造が、薬事行政にもある。先鞭をつけたのはアメリカだ。1992年米連邦議会は処方薬審査料法を可決し、FDA(米国食品医薬品局)による新薬審査の際、製薬会社が審査料を払うしくみを導入した。目的は[審査の迅速化」だ。
狙い通り新薬がスピード承認されるようになった反面、発売からほどなく深刻な副作用が多発し、承認取り消しや回収に至るケースも増えた。
 英国医師会が発行する専門誌『BMJ』(2002年9月14日号)は「誰がFDAを所有しているのか?製薬会社か、国民か」と題するレポートを載せ、そのなかで「FDAは製薬会社のしもべ(servant of the industry)になった」という、前FDA審議会委員の告発も取り上げた。
 後を追ったのが日本だ。日本では2002年12月、それまで医薬品診査を行ってきた国の機関を独立行政法人化する法案が国会を通り、翌年4月、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)が発足した。
狙いは「バイオ・ゲノムの世紀にふさわしい薬事制度を円滑かつ着実に推進」すること(厚労省が業界に配布した取扱厳重注意の文書)、要は製薬産業の振興で、FDAと同じく、新薬診査の手数料を製薬会社からがっぽりとるようになった。
取材・文/北健一(ジャーナリスト)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

別冊宝島2000号「がん治療」のウソ (別冊宝島 2000)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 大型本

 


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