科学と技術 [言葉]
十九世紀のイギリスの電磁気学の基礎を築いたファラデーは、数多くの人を魅了する実験でも知られたが、ある婦人から「そんな役にも立たないつまらないことをして何になるのですか?」と聞かれ、こう問い返したという。
「生まれたばかりの赤ん坊が、何の役に立つというのですか?」
気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P122
P179
誰も知らない。だから知りたい。そんな疑問への答えを探すのが科学である。「役に立つ」という価値観は、科学というより技術にふさわしい。日本では科学技術」と一言で呼ぶけれど、科学と技術の役割分担が、このせいでごっちゃになっているように思う。
このことが、五十年がかりの実験や、明らかに儲かりそうにない研究にブレーキをかけてしまわないことを願う。人間の知的好奇心には、こういう科学の栄養供給が必要だ。
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