SSブログ

口のきき方に気をつけろ [処世]

 ところで、原発事故で露出が急増している原子力安全委員会の斑目春樹委員長が、こんな発言をした。
「可能性はゼロではない、は事実上ゼロという意味です」
煮えたぎる原子炉に海水を入れて冷やすかどうかの局面で、海水を使うことにより「再臨界」が起きないかと政治家に問われて「可能性はゼロではない」と答えたのだという。
 科学の世界に「絶対」はない。「ゼロ」や「一〇〇パーセント」は存在しない。これは科学者独特の共通認識だ。彼はこれに基づき、確率がきわめて低いことを「絶対に起きない」とは言わず「可能性はゼロではない」と表現した。  素人にはわかりにくい。じっさい、政治家たちはこの言葉を「再臨界の可能性がある=海水注入は危ない」と受け取った。~中略~
 後になって斑目さんは前述のような釈明をするわけだが、「可能性はぜろではない」に続いて「でも無視できる程度で、心配ご無用」と補っていれば騒動は回避できた。
非専門家が専門家に意見を聞くのは、自分たちで判断できないことについて白黒つけてほしいからである。そんな状況下で自分の自所にだけ基づいて発言すれば、間違って受け取られ手も仕方ない。

気になる科学 (調べて、悩んで、考える)
元村有希子 (著)
毎日新聞社 (2012/12/21)
P206

DSC00146 (Small).JPG

P239
 自分の常識を超えるような現実を前にして「そんなはずはない」という意識が現実を見えづらくさせることは「正常性バイアス」と呼ばれる。さらに住人の安全を守る責任を負った人たちが、見極めの難しいリスクについて「これをそのまま伝えたらパニックが起きる」と忖度(そんたく)し、物事を婉曲に伝えたり公表を伏せたりすることは「エリートパニック」と呼ばれる。
 どちらも福島第一原発事故で起きたことだ。枝野幸男官房長官(当時)は、水や牛乳や野菜から放射性物質が検出されたことについて「直ちに健康への影響はない」「短期的には危険はないものとみられる」という表現を多用し、逆に「長期的には危ないということか」との不安が広がった。彼が科学的知見に基づいて言っていたかも怪しいが、正常バイアスとエリートパニックの典型例ではないかと思う。


タグ:元村有希子
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント