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徳の貯蓄 [倫理]

 天性実に美わしく生まれて人がある。嫉妬羨望の念なく、ほとんど悪の観念なきかと思われる人がある。しかし、こんな人は極めて希だ。十中の八、九人はこれに反し修養を積まなければ善に進まれぬものである。
善悪の両性を有するものは、たゆまず失望せず徳を貯えるようにせよ。~中略~
 徳を積むものは、前に述べた富とか知識とかを積むもののごとく、この世に栄華を極めることの保証は出来ぬ。人から偉いと言われるや否やも分からぬ。月給も多く多くもらえるかどうか分からぬ。
~中略~
しかし、徳には名誉も黄金も及ばぬ保存力と快楽とがあるものと見ゆる。金ある者は、あるいは失敗して一夜にこれを失うことがある。知識は病気のために忘れることもある。
人に嫉まれたりうらやまれたりすることもある。しかし、徳のある人は火災に喪失するの憂いもなく、人に嫉まれることもない。

修養
新渡戸 稲造 (著)
たちばな出版 (2002/07)
P262

一乗寺 (3).JPG一乗寺

P264
徳の貯蓄はいかなる人、いかなる位地においても、行わんとする意志があれば、必ずできる。納豆売り人は金力の貯蓄を行わんとしても、少額たるを免れぬ。また肥桶を担う農夫は知識を貯蓄せんとしても、狭きを免れぬ。
しかるに徳の貯蓄に至っては、職業の貴賤、金力の有無、社会階級の高下、身体の強弱関係なくできる。
しかも、最初の種はすでにかくじにももっておるから、今から・・・、今晩からでもすぐに積み始めることができる。

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性急にやらねばならぬこともたくさんありますが、
節度を保ち、不自由を忍ばねば、手に入れることのできぬものもあります。
徳はそれだと申します。
徳とは縁続きの愛も同様です。
(「タッソー」一一一九行以下)

ゲーテ格言集
ゲーテ (著), 高橋 健二 (翻訳)
新潮社; 改版 (1952/6/27)
P12


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