自然 [言葉]
「自然」という言葉には古くから、「しぜん」と「じねん」の二通りの読み方がありました。
これも文書を読む場合に注意が必要とされる言葉の一つです。「しぜん」と読む場合を挙げると、~中略~ 「もしも、万が一」の意味で用いられており、「万一、上野佐渡守が勝手なことを言ったとしても」と訳すべきなのです。そして、中世の文書の中ではこの意味でつかわれているケースが圧倒的に多いと思います(前掲、佐藤氏「〔新版〕古文書学入門」)。
~中略~
ところが「じねん」と読む場合には、「おのずからそうであること」という意味に近い語として用いられています。
ですから、いずれの意味で用いられているかを古文書の文脈の中で判定することは、実はなかなかむずかしいのですが、中世文書の場合、「自然」は「もしも、万が一」と訳した方が間違いは少ないと思います。
歴史を考えるヒント
網野 善彦(著)
新潮社 (2001/01)
P181
P95
自然と精神のあいだには、自然が下で精神が上、という明確な序列がある。人間の手の加わらないものを「自然」、人間の活動によって作りあげられた有形無形の産物を「精神」と呼ぶとき、「精神」のほうが「自然」よりもすぐれている、とするのが、ヘーゲルの終生かわらぬ価値観であった。
ヘーゲルの自然の学ないし自然哲学は、そうした近代産業と、その上になりたつ近代文明にたいして、それを肯定し、それを根拠づけるような自然の像を提供するものだった。
自然が、人間世界の発展のための手段として利用されることを、人間世界にとって歓迎すべきことだとするだけでなく、自然そのものにとっても歓迎すべきことだとするのが、ヘーゲルの基本的な自然像だった。
新しいヘーゲル
長谷川 宏(著)
講談社 (1997/5/20)
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