世間師 [雑学]
日本の村々をあるいて見ると、意外なほどその若い時代に、奔放な旅をした経験をもった者が多い。村人たちはあれは世間師だといっている。
旧藩時代の後期にはもうそういう傾向がつよく出ていたようであるが、明治に入ってはさらにはなはだしくなったのではないだろうか。
忘れられた日本人
宮本常一 (著)
岩波書店 (1984/5/16)
P214
P259
明治から大正、昭和の前半にいたる間、どの村にもこのような世間師が少なからずいた。
それが、村をあたらしくしていくためのささやかな方向づけをしたことはみのがせない。いずれも自ら進んでそういう役を買って出る。政府や学校が指導したものではなかった。
しかしこうした人びとの存在によって村がおくればせながらようやく世の動きについて行けたとも言える。そういうことからすれば過去の村々におけるこうした世間師の姿はもうすこし掘りおこされてもよいように思う。
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