森田療法 [雑学]
フロイトとほぼ同時代に生きた森田正馬(一八七四~一九三八)が確立した、非常にユニークな神経症治療の手法です。
その特徴的な考え方のひとつに「症状不問」があります。森田は、患者の症状をなくすことではなく、「その症状があっても患者が生きていけるようにする」ことを大事にしました。
たとえば、赤面恐怖症の患者は「人前で顔が赤くなるのはイヤだから治したい」と訴えるでしょう。
森田療法では、それに対して「なぜ赤面を治したいと思うのか」を問いかけます。すると患者は「人に嫌われるから」とか「みんなにバカにされて恥ずかしいから」などと答える。つまり、実は赤面そのものを治すのが目的ではなく、他人に好かれたり、敬意を持たれたりするのが本当の目的のはずです。
だとすれば、赤面を治さなくても、目的を果たす道はいくらでもあるでしょう。
人とうまく話をするスキルを身につけたり、勉強や仕事で高い能力を示したりすれば、嫌われたりバカにされたりすることはありません。そうやって対人関係に自信がつけば、結果的に赤面がおさまることもあります。
この森田療法も、赤面の原因を無意識の世界に求めたりはしません。そもそも原因を探すことすらせず、逆に患者が何のためにそれを治したいのかという「目的」や、その背景にある本当の欲望を重視するのが特徴です。それを明らかにするためには、患者の考えていることを意識レベルで理解することが必要になるのです。
自分が「自分」でいられる コフート心理学入門
和田 秀樹 (著)
青春出版社 (2015/4/16)
P72
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