古社に逃げこめ [処世]
ちなみに、東日本大震災の時の津波からの平均避難速度は毎秒0・六二メートル。一分に三七メートルであった。健康な老人や群衆は一分に六〇メートル歩く。しかし、歩行困難者や乳幼児・重病人は一分に三〇メートルとされる(消防庁国民保護・防災部防災課「津波避難対策推進マニュアル検討会報告書」による)。
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P159
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)
- 作者: 磯田 道史
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: 新書
P161
人間は足が津波に三〇センチ以上浸かると動けなくなり、避難の自由を失う。
浸水一メートル以上の津波に巻き込まれると、ほとんどの人が亡くなる。
現代の木造家屋は二メートル以上の浸水で半数が全壊、三メートル以上でほとんどが全壊する(「南海トラフの巨大地震モデル検討会(第二時報告)」)。
伝統工法の木造家屋は、現代のものより弱く、二メートル以上の浸水で流失する、とされている。
P184
「このあたりで津波で流された神社は三つだけと聞いてます」。
事実そうだった。荒沢神社はこのあたりで最古の海辺の神社だが、御神体の手前で津波がぴたっと止まった。ちょうど貞観津波(八六九年)の頃に作られ、慶長三陸津波(一六一一年)もくぐりぬけている。
P186
これは津波の時、高台の古社に逃げこめば助かりやすいことを示している。事実、南三陸の戸倉小学校は津波で二〇メートルも浸水したが教員らが近所の五十鈴(いすず)神社に児童を誘導。津波のなか神社の境内だけがポッカリ島のように浮かび、助かった。
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)
- 作者: 磯田 道史
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: 新書
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