マツ林は凶器になる [社会]
「この通り、マツ林があったところは住宅が破壊されています。マツがなかったところのほうがかえって住宅が残っている。
マツ林はかえって危険。巨大津波ではマツは根こそぎ抜けて流され、人や住宅に襲いかかるのだという。現場を踏むと、それまでの固定観念がガラガラと崩れることがある。まさに目からウロコだった。
陸前高田の「奇跡の一本松」をテレビでみた時、海岸のマツたちが身を挺して町を守ってくれたとの印象をもったが、ものはもっと深く考えたほうがいいらしい。
陸前高田の高田松原は、江戸前期の一六六七(寛文七)年に地元の豪農菅野杢之助らが植林をはじめたものだ。たしかに明治・昭和の三陸津波、チリ地震津波の被害を防いだが、「マツが津波から町を守る」というのはわずか一〇〇年の時間で見た歴史の知恵にすぎない。
「奇跡の一本松」はマツが防潮の役割を果たせなかったことの象徴でもある。
津波が一〇メートルを超える巨大津波になるとマツ林は凶器になる。
天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P187
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