ユタ [言葉]
身内に別れて寂しい不幸の日を送った者は言うにおよばず、富栄えて眷属の多い人々でも、田舎では、つれづれなる夜の物語などに、この世の始めとわが家の始めを、もっと精彩に知らねばならぬと、考える折りが多かったことと思う、しこうしてこの要求に対しては、村々には物知りと称する女性がいた。
物知りは沖縄の方では、ユタと呼ぶのがふつうである。
大島加計呂麻などでは正神、またホゾンカナシとも言っていた、本尊と頼む神仏の力によって、ただの人の目には見えぬ者を見る。
ゆえにその言うことが信ぜられた。今まで不明であった高祖の名でも事業でも、これに聞けばたちまち闇の園の灯火であった。
海南小記
柳田 国男 (著)
角川学芸出版; 新版 (2013/6/21)
P62
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