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茶 [雑学]

 十六世紀の末に、オランダ人が、快適な飲料が東洋のある灌木の葉から作られるという情報をもたらした。
 ~中略~ この一六一〇年という年に、オランダ東インド会社の船がヨーロッパに最初に茶をもたらした。それは一六三六年にフランスで知られるようになり、一六三八年にはロシアに達した。
英国は一六五〇年にこれを歓迎して、「かの素晴らしき、かつあらゆる医師の推奨せる中国飲料、中国人はチャと呼び、他国人はテイまたはテーと呼ぶ」と語った。
 この世のあらゆる良いものと同様に、茶の宣伝も反対にでくわした。~中略~ 当初は茶は高価(一ポンドにつき約一五、六シリング)のため一般の消費するところとならず、「饗応と歓待の王室御用品、王侯貴族むけの贈物」であった。こういう欠点にもかかわらず、喫茶は驚くほど急速にひろまった。
十八世紀の前半になると、ロンドンのコーヒー店は事実上喫茶店となり、アディソンやスティールのような文士、通人の溜まり場になり、彼らは茶を飲んで退屈をまぎらわした。

この飲料はやがて生活必需品―課税対象となった。これに関連して茶が近代の歴史に演じた重要な役割が思いだされる。植民地アメリカは本国の圧迫に言いなり放題になっていたが、茶に重税が課されるや、ついに人間としての忍耐の限度に達した。アメリカの独立はボストン湾に茶箱を投げ捨てた日にはじまる。

茶の本
岡倉 天心 (著),桶谷 秀昭 (翻訳)
講談社 (1994/8/10)
P20


英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1994/08/10
  • メディア: 文庫

 



DSC_2085 (Small).JPG上野ファーム

 


タグ:岡倉 天心
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