滝ノ口 [言葉]
そもそも「滝ノ口」とは何かということになるのだが、その背景に水神(水分(みくまり))信仰があることはまちがいないように思われる。
「竜(龍)」という語はその一つの表れではないか。久保田展弘は次のように書く。「吉野山はそもそも水神を祀る聖域であった。そして金峯山の信仰が、吉野川の水源を司る青根ヶ峰における水分神に発するのだとすれば、この金峯山の山上であるところの山上ヶ岳一帯は、水神の支配する境域と言っていい。したがって、現在の大峯山寺の湧出石に現れた蔵王権現は、当然ことながら水神信仰のなかから生まれた尊格と考えてよいのではないかと思う。
~中略~
水源が特別な聖地となるのは万国共通のことで、そこはすべての生命の発端として昔から多くの人びとによって尊び祀られてきたのである。室生寺における室生龍穴、長谷寺における瀧蔵(たきのくら)、日光東照宮に対する瀧尾(たきのお)など、その例は枚挙に遑(いとま)がない。
世界遺産神々の眠る「熊野」を歩く
植島 啓司 (著), 鈴木 理策=編 (著)
集英社 (2009/4/17)
P65
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