時間割引率 [言葉]
非認知能力の一つに時間割引率がある。
時間割引率とは、将来のことをどの程度割り引いて考えるかという程度を表す。時間割引率が高いと将来のことをあまり重視しないことを意味する。逆に、時間割引率が低いと、将来のリターンを重視することになり、教育や訓練を受けて生涯所得が高くなることが予想される。
では、こうした時間割引率は、人生のどの時点でそのように形成されていくのだろうか。
心理学者のミッシェルと正田は、四、五歳の子供たちに対して行った「マシュマロテスト」という有名な実験で、子どもの頃の忍耐強さの有無がその後の社会での成功に大きな役割をもつことを示した2。 ~中略~
その結果、我慢できてマシュマロを二個もらった子どものほうが、そうでもない子どもよりも成績がよく、リーダーシップもあり、社会性を備えていたことが示された。つまり、忍耐力という非認知能力の幼少期での形成の有無が、その後の人生に大きな影響を与えるのである。
競争と公平感―市場経済の本当のメリット
大竹 文雄 (著)
中央公論新社 (2010/3/1)
P96
P98
学歴が高いほど、所得が高いほど時間割引率が低いということは、実証的に明らかにされている5。親の貯蓄行動が子どもの教育や貯蓄に影響を与えていることを示した研究もある6。
P110
遠い将来の時間当たり割引率が、近い将来の時間当たりの割引率より低下するような特性をもつ時間割引率は、「双曲割引」と呼ばれている。 このような双曲割引型の時間割引選好を前提にすると、宿題を先延ばしにして後悔することや、カードで衝動買いをしてカード破産してしまうという事実を説明することができるのである。
消費者金融で借り入れて債務整理になった人は、消費者金融で借り入れた経験はあるが債務整理になっていない人より、夏休みの宿題を最後にしていた人の割合が高く、双曲割引の特性が強いことがアンケート調査から明らかになっている。また、消費者金融から借り入れた経験がある人は、消費者金融から借り入れをしたことがない人よりも、夏休みの宿題を最後にした人が多い2。
また、夏休みの宿題を最後にしていた人は、そうでない人よりも肥満になっている傾向があることもアンケート調査から明らかになっている3。
しかし、多くの人がこのような双曲割引の時間割引率をもっているにもかかわらず、全員がカード破産しているわけではないし、夏休みの宿題ができなかった人ばかりではない。
少し合理的な人は、自分の時間割引の特徴が時間非整合的であるということを知っている。
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