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家計分離と世帯分離 [家族]

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 年金制度が整備されたことは、高齢者と子世代の関係を変えました。高齢者が子世代とは別のサイフを持てるようになったからです。
それまでは家族というのは家計を共同すること(つまりサイフがひとつ)が前提でした。戦前なら年寄りが家計の実権を握って離さず、公然・隠然の権力を握っていたということもありましょうが、それもまだ元気なうち、50代や60代に死ねた時代の話。 ~中略~
 家計の共同とは、この場合、子どもの家計に依存することを意味します。同居していれば子どもの家計に組みこまれ、別居していれば子どもの仕送りに頼る・・・・だからこそ頼る子どものいない高齢者ほど、みじめなものはなかったのです。それがこれまでの高齢者でした。
 それに対して、年金制度とはいわば社会的仕送り制度です。
~中略~
 年金制度はそこに、子どもから独立した親のサイフをもたらしました。子どもに対して多少なりとも大きい顔をしていられるのも、孫に小づかいをやる楽しみが味わえるのも、ふじゅうぶんとはいえ、年寄りが自分だけのサイフを持っているからこそ。 ~中略~ それどころか、いまや親の年金にパラサイト(寄生)している子世代すらいるくらいですから。

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 高齢者に年金が発生してから、多くの世帯では、たとえ同居していてもサイフは別、という家計分離が世帯分離に先行して定着しました。
高齢者の家計は高齢者の年金でまかなう、介護は必要になっても年金の範囲以上は使わない、というのがあたりまえになりました。いまどき親に仕送りしている子どもはめったにいませんし、世帯分離をして親に生活保護を受給してもらうケースもあります。
それどころか、親の持ち家と年金にパラサイトして、逆に親に養ってもらっている成人した子どもたちさえいます。これを高齢者への「経済的虐待」と呼びますが、親は子どもの面倒を見る責任があると考えてか、虐待されているという自覚はありません。
こういうケースでは親に寄生している子どもが自分の生活費が減ることを怖れて、要介護状態になっても介護も医療も使わない、という虐待児例が出てきます。現場で出遭う「処遇困難事例」では、いっそのこと「世帯分離」をしておひとりさまになってもらったほうがどれだけ介入しやすいか、という嘆きを、現場のケアマネージャーたちから聞きました。

おひとりさまの最期
上野千鶴子 (著)
朝日新聞出版 (2015/11/6)

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タグ:上野千鶴子
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