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再家族化 [言葉]

 政府の在宅誘導は、家族介護への誘導です。こういう変化を介護の「再家族化」と呼んだのは、比較福祉レジーム論のエスピン=アンデルセンでした。 ~中略~
介護の社会化を「脱家族化」とも呼びますが、その変化は一方にだけ進むのではなく、「再家族化」することもあります。そして「再家族化」とは、福祉予算を削減したい国家が、どこでも採用する戦略なのです。

おひとりさまの最期
上野千鶴子 (著)
朝日新聞出版 (2015/11/6)
P61

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P55
 なぜ、人口が減少するのに世帯数は増え続けているのだろうか?
 答えは簡単で、ひとり暮らし世帯(独居世帯)が拡大しているからだ。「夫婦と子供2人」という家庭が標準的世帯だった頃から、家族形態は大きく変わりつつある。

P56
 団塊世代の先頭である1947年生まれが75歳となるのは2022年だ。夫が亡くなり、ひとり暮らしとなる女性が増える頃である。「ひとり暮らし世帯」の増加が本格化してくるこの年を、日本の「ひとり暮らし社会」元年と呼ぶことにしよう。

P58
若い世代のシングルの増大は、将来のひとり暮らし高齢者の増大を意味する。今後は、配偶者との死別や離婚に加えて、「若い頃からずっと独身」が増える。未婚や離婚の拡大が止まらない以上、ひとり暮らしが日本の主流になることは避けられないのである。
それは「家族」の消滅の危機でもある。「家族が社会の基礎単位」という考え方も成り立たなくなり、社会への影響は計り知れない。
 とりわけ深刻なのが社会保障制度である。ひとり暮らしの激増を織り込んでいないからだ。医療や介護分野でいえば、政府は地域包括ケアシステムを充実させ、住み慣れた地域で最後のときを迎えられるよう、地域の協力を得て暮らし続けられる社会づくりを目指している。
だが、「病院や介護施設」から「在宅医療・在宅介護」へとシフトしようにも、現実問題として家族の支えなしには移行できない。

P70
 先にも少し触れたが、政府は社会保障費の抑制に向けて、医療・介護を「病院完結型」から「地域完結型」へシフトさせようとしている。老後も住み慣れた地域で暮らし続けられるようにというのがキャッチフレーズだ。
 その具体策として、24時間対応の訪問サービスを中心に、医療や介護・生活支援などを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」構想を描いており、今後は在宅サービスをどんどん増やす考えだ。だが、高齢者のひとり暮らしや夫婦とも高齢者という世帯が増えるのでは、「地域包括ケアシステム」が政府の思惑通りに機能するとは思えない。
 そもそも日本全体で勤労世代が減っていくのに、医療・介護人材だけを増やすわけにはいくまい。いくら診療報酬や介護報酬を上げても、在宅向けサービスの量的拡大にはおのずと限界がある。そうなると、必然的に公的サービスを補完する「家族の支え」に期待が集まるわけだが、「家族の支え」はどこまで当て込めるのだろうか?

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
河合 雅司 (著)
講談社 (2017/6/14)


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