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痛いかどうかは本人次第 [医学]

 日常の診療の中で、注射のときに次のようなことによく遭遇する。非常に多くの患者に、一人の同じ医師が同じ方法で患者の同じ部位に、同じ注射器と針を使用し、薬の内容も量も全く同じものを注射した場合、患者が注射されたために感ずる痛みの反応は、その日によって多少の違いはあるかもしれないが、大体同じである。すなわち、平気で注射を受けている。
 しかし、非常に多くの患者の中で一人だけ注射をするたびに「痛ーい!!」と大声をあげるようであれば、この人は普通の人よりも「知覚閾値」や「最小許容閾値」は低いと考えてもよさそうである。
そのことから、この人の訴える本来の痛みなるものは、大多数の人では、それほど気にならない痛み、あるいは、容易に耐えられる痛みであっても、この人にとっては非常にはげしい痛みとして認識している、と推察される。
 感覚閾値も許容閾値も、暗示によって変化することが多い、例えば、「少しでも痛いと感じたらすぐに教えてください」と言えば、感覚閾値は低くなるし、「本当に痛いと感じたらその時になって教えてください」と言えば、感覚閾値は高くなる。「この痛みに耐えたらオリンピック選手になれる」などと、前もって情報を与えると、最大許容閾値は高くなる。

痛みとはなにか―人間性とのかかわりを探る
柳田 尚 (著)
講談社 (1988/09)
P32

DSC_4510 (Small).JPG薦神社


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