コストの外部化 [社会]
日本の株式会社は九〇年代から露骨に「コストの外部化」を始めました。本来であれば、自分たちがコストを自己負担しなければならないことを次々と「外部化」してきた。
人材育成はそれまで社内教育して手作りしてきたものを次々と「外部化」してきた。人材育成はそれまで社内教育して手作りしてきたものを、その分のコストを削減するために大学に外部化した。
同じことをすべての社会活動について行った。公害規制の緩和を要求するのは環境保護コストを外部化するためです。高速道路や鉄道の施設を要求するのは運輸コストを外部化するためです。~中略~
原発事故がその適例です。東電という一民間企業が安全確保のためのコストを削れるだけ削ったせいでシリアスな事故が起きた。それによって周辺住民は住む場所を失い、仕事を失い、拠るべき共同体を失った。それだけではありません。これから先、土壌の除染や廃炉にかかるコストも国民の税金から支払われる。
最終講義 生き延びるための七講
内田 樹 (著)
文藝春秋 (2015/6/10)
P343
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