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荀子 [哲学]

 孔子のおよそ二五〇年後に生きた荀子は、わたしたちの中国哲学の研究をしめくくるのにぴったりの人物だ。というのも、自分より前にあらわれた思想家たちの業績を統合したからだ。
 荀子は高名な師匠で当代きっての儒家として戦国時代の末期を生きた。そのことが荀子の思想形成におおいに影響をおよぼした。当時はいくつかの国が軍事力を高め、他国を圧倒しはじめており、覇権を握るのがどの国であれ、その後にもたらされる世界では、孟子の思想が役に立たないことは明らかだった。
 このあたらしい政治情勢は知的世界に影響を与えた。時代の混乱と無秩序を目撃した荀子などの思想家は、盛情に対する統一的な解決策を求めただけでなく、過去の時代からの種々異なる哲学的系譜を取りあげ、首尾一貫した統一体にまとめあげる統合命題をも探求した。
荀子は、でたらめな自然の要素を能動的に織り合わせ、世界に〈ことわり〉(パターン)をもたらす存在として人間を描きだし、それと同じように、過去三世紀にわたる数々の刺激的な概念や思想に規則性(パターン)を与えた。
 荀子は自分の哲学を確立するなかで、自分に先んじた思想家たちがたしかに大きな意義のある概念を生み出していたと考えるようになった。たとえば、孟子が自己修養に着目したのは正しかったし、人間がものごとを結びつけるという老子の考えはきわめて重要だ。
けれども、荀子は同時にどの思想家にも盲点があると論じた。おのおの重要なことを理解しながらも、大局観にかけていると考えた。
 ただし、孔子だけは別格だった。荀子は、孔子だけがもっとも重要な、もっとも根本的な慣例を理解していたと考えた。よりよい人間になるための〈礼〉の修練だ。 ~中略~
荀子は、礼がそのとおり人為であると認識できたとき、はじめて人の本性を変える礼の力が発揮されると考えた。この人為という認識こそ、世界全体にも適用すべきだと荀子が説いているものだ。そうすれば、礼はよりよい世界の構築にも役立つものになる。

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P204

 

 

DSC_4779 (Small).JPG英彦山


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