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グローバル・スタンダード [ものの見方、考え方]

 彼らはリマとかラパスの存在は知っていたが、東京やニューヨークは知らない。世の中心はあくまで自分の村だ。
彼らと一緒に暮らすうちに、「世界の中心は大都会にあって、そこから距離的に離れるほど文化果つるところ」という意識が自分の中にあったことに気づいた。

 物質の豊かさ、便利さは確かに都会にあるかもしれない。しかしアンデスのどの村も、物質的にも経済的にも自立していた。文化果つるところではなかった。
 オリノコ川水源地帯のヤノマミは外部社会との接触は極めて少ない。しかし彼らは自分たちが世の中心にいると信じ、誇りをもって生きている。
彼らを見ていて、便利さ、効率、物の豊かさを世界の尺度として考えることの過ちに気づかされた。

関野 吉晴 (著)
グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇
筑摩書房 (2003/03)
P121

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

  • 作者: 関野 吉晴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: 新書


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P76
マチゲンカ(住人注;ペルー・アマゾンの熱帯林の先住民で、原始的な焼き畑と狩猟・採集・漁労をして暮らしている)と一緒に暮らしていると、自分の劣った面ばかりが目立つ。弓矢を引いてみる。飛距離、スピードともに桁違いに劣る。川を進んでも、密林の中を歩いても、彼らについて行くのがやっとだ。動物を見つける能力も、魚を捕る能力も格段に違う。彼らは優秀な建築家で、家も楽々と作ってしまう。

P80
「お前の住んでいるところはここから遠いのか?」とトウチャンが尋ねるので、
「満月が半月になるくらいの時間」と答えた。
「なんだ、隣の川に行くのと同じじゃないか」と驚いていた。
 彼の理解では世界は川と森で覆われている。そして、実際となりの村まで一週間かかるのだ。
日本の空を見上げながら、彼らも同じ空を見上げてるんだな、と思うと胸がつまる。

P83
 一緒に旅に出ると、私と彼らの持ち物に歴然とした違いが浮かび上がる。寝袋、着替え、薬品、カメラ機材、大きなザックからはみだしそうなたくさんの装備品。
これに比べ彼らの持っている物の何とシンプルなことか。樹皮繊維で作った袋の中に、当座のイモやバナナを詰め込み、背負う。あとは弓矢と山刀だけだ。残りはすべて自然の中から必要なものを調達しながら旅をする。この身軽さを私はとても羨ましく思う。

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

グレートジャーニー―地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇 (ちくま新書)

  • 作者: 関野 吉晴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: 新書





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