大嘗祭 [日本(人)]
新嘗祭(しんじょうさい)が、毎年秋11月下旬の卯の日に宮中でおこなわれる収穫祭であることはいうまでもない。
その年にとれた新穀をアマテラスオオミカミ(または天神地祇)にそなえ、天皇が一緒に食べる神人共食の儀式である。
これに対し、先帝が亡くなって新帝が即位したときにおこなわれる新嘗祭が、特に大嘗祭と呼ばれた。
山折 哲雄 (著)
天皇の宮中祭祀と日本人―大嘗祭から謎解く日本の真相
日本文芸社 (2010/1/27)
P46
P48
かつての天子は「スメミマノミコト」と呼ばれた。「スメ」は神聖を示す言葉、「ミマ」は肉体のことであるから、それは全体として「神聖な肉体を持つ命」という意味になる。
したがって、歴代の個々の天子の体は「魂の入れ物」だったのであり、この入れ物としてのスメミマノミコトのなかに天皇霊が入ってはじめてその天子は威力ある天子となる。
歴代の天子は、先代からの天子の血を引いているがゆえに威力ある天子となるのではなく、鎮魂(タマシズメ)の儀礼によって天皇霊を自己の体につけ、それによって威力ある天子となるのであり、そのことを実現する場が大嘗祭だった。
P74
これまで述べてきたことをまとめてみれば、大嘗祭とは、歴代の天皇の肉体を次々と通過してきた神武天皇以来の天皇霊次代の天皇の体に付着させるための儀礼であり、すなわち天皇霊の付着・継承ということがその最大の眼目だった。
同時に新嘗祭にも、毎年暮れになると衰えてくる天皇の霊を強化するという意味が込められていた。それがタマシズメの儀礼であるというのが折口信夫の見方だった。
それに対して、翌年の正月におこなわれる密教儀式、すなわち後七日御修法の場合は、明らかに外部から人間にとりつく邪霊や物の怪を排除するための儀式として考えられていた。
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