油注がれた者 [宗教]
古代イスラエルは、士師の時代のあと、王制に移り変わっていきます。初代の王はサウル、二代目はダビデ、三代目の王はソロモンです。しかし何とかまとめきれたのはこの三代のみで、その後、王国はもろくも分裂してしまいます。
~中略~
初代の王サウルは、サムエルという人物に見いだされて王となりました。サムエルは、モーセやヨシュアと同じように神に呼び出され、その意志を伝える役目を負わされた人でした。のちの時代、こういう人は預言者と呼ばれるようになります。
~中略~
聖書はひとつの立場から一度にかかれたものではなく、別々に書かれた古代イスラエルの宗教文書を、あとから編集してまとめたものです。ですから多くの考えが含まれていて、その間には矛盾もあります。
さて、イスラエルの一部族の有力者の息子であったサウルは、あるとき父親のロバが逃げたのを探しにきて、サムエルと出会います。
~中略~
サウルのことを事前に神から聞かされていたサムエルは、彼を認めて、その頭に油を注ぎます。これは、神に選ばれた特別なものであることを示す儀式でした。
のちに救い主が待望されるようになると、これもまた「油注がれた者」と呼ばれるようになります。(この言葉が「メシア」で、これをヘブライ語からギリシャ語に訳したうえで日本語にしたのが「キリスト」です。)
かくしてサウルは民の特別な指導者となりました。
~中略~
こうしてイスラエルは、対等な人間同士の国から王を戴く国へと、確実に変質していくことになります。
大城 信哉 (著)
あらすじと解説で『聖書』が一気にわかる本
永岡書店 (2010/4/10)
P120 旧約聖書
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