道具に振り回されるな [哲学]
「他流では、主として大きな太刀を好んで使うものがあるけれども、わが二天一流からみれば、これは弱い流儀というべきである。
それは、どんなことがあっても敵に勝たねばならないのだということを知らず、太刀の長いことを頼りにして、敵が遠くはなれているうちに打ち、これで勝ちたいと思うので、それで長い太刀を好むようになるのである。(略)
太刀を長くすることで遠くの敵に勝とうとする、それは心が弱いからであり、弱い兵法と断定するのである。
敵が接近してきて組み合うようなことになった場合、太刀が長ければそれだけ打つことが難しくなり、太刀のうごきも限定され、結局は太刀そのものがお荷物になってしまって小脇差を使う人よりは不利になってくるのだ」
(他流に大きなる太刀を持つこと)
奈良本 辰也 (著)
宮本武蔵 五輪書入門
学習研究社 (2002/11)
P210
P211
「短い太刀だけを使って勝とうとすること、これも真実の兵法ではない。
昔から”太刀・刀”といいわけて長短を区別しているのだけれども、ちからの強い人なら大きい太刀でも軽々と使えるのであり、あえて短い太刀を使う必要はないのだ。
短い太刀を持つのは、敵の振る太刀のすきに切りこもうとか、飛び入ろう、つけ入ろうとばかり考えることになり、それは偏っていてよろしくないのである。
~中略~
兵法の道は正しくまっすぐなものである。正しい理論にしたがい、敵を追いまわし、相手を屈服させるような心がけでありたい」
(他流に短き太刀を用いること)
「此一流において、長きにても勝チ、短きにても勝。故によって太刀の寸をさだめず、何にても勝事を得る心、一流の道也」
谷沢 永一 (著)
宮本武蔵 五輪書の読み方
幻冬舎 (2002/10)
P67
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