叱ってやるのは親の慈悲 [教育]
涙がたまって木目がぼやけると、きまっていわれた言葉も忘れない。
「おまえ、なんで泣くんだ。正直にいってごらん。足がしびれたか、それとも腹がたっているのか?」そして
「ものを教えてもらっている最中に、むやみと泣くものじゃない」という。なつかしい。
あの頃もその後も、私は無限に父に叱られるうまれつきなんだ、というようにおもっていたが、なにが無限なものか。
三十年四十年はまたたく間だった、いまはもう、この机の横に呼びつけ、叱ってくれる声はない。
叱られなくなって、叱られる仕合せをおもう。
叱られない環境などちっともいいものではない、私にとっては。
叱ってやるのは親の慈悲、とは俺はいいたくないが、おまえたちを叱るのは実は骨が折れるんだ、といわれてさすがの弟も困った表情をしたのなども昨日のようである。
幸田 文 (著), 青木 玉 (編集)
幸田文しつけ帖
平凡社 (2009/2/5)
P218
三徳山三仏寺文殊堂1
字引にはしかるとは、声をあらだててとがめ、戒める、とある。戒めは、止め禁じる意、とある。~中略~
若いころ親から、おまえはしかられると、教えられるを混同している、と注意されたが、教える、は知っていることを告げ知らせ、できるように導くことであり、静かな親切である。
しかるは、荒々しい好意だろうか。この好意、私はできたことがないようなのである。
(一九七一年 六十六歳)
幸田 文 (著) , 青木 玉 (編集)
平凡社 (2009/3/5)
P39
人を叱るときには、その伝え方には4つの方法があると言われています。
1.攻撃的に叱る
2.黙る
3.皮肉を言って叱る
4.自分も相手もOKとなるように叱る
すこし専門的な言い方をすれば、右の4つは次のように呼ばれます。
1.アグレッシブ・コミュニケーション
2.パッシブ・コミュニケーション
3.パッシブ・アグレッシブ・コミュニケーション
4.アサーティブ・コミュニケーション
~中略~
パッシブ・アグレッシブ・コミュニケーションは、表面上は穏やかなものの、裏では非常に攻撃的な方法です。相手から叱られているときであれば、黙って聞いているものの、心のなかでは舌を出しているようなことをしています。
そして、叱るときに最も望ましいとされているのが、4のアサーティブ・コミュニケーションです。
イラッとしない思考術
安藤 俊介 (著)
ベストセラーズ (2014/11/26)
P129
P208
澤口 虐待と体罰とはまったく違います。無関係です。今言った体罰は、あくまでもしつけに必要なしかるべき体罰ですから。
サルの世界では上位のサルは若いサルを威嚇したり攻撃したりして群れのルールに従わせようとします。チンパンジーもゴリラもそうですけど、子どもを叱るときはきちんと体罰を加えている。
そういうのを見てると体罰も重要だな、って気がしてくるんです。
あくまでも動物学的な観点からですけれども、それが子どもにとって「普通の環境」なのかもしれない。
P209
澤口 大事なのは、情動体験をしたあとの情報の与え方ですよね。
ただ叱るのではなく、そのあとのひと言ふた言を、その後の人生に生かせるようないい方向にフッともっていくとか。
たとえば危険な目にあっても、あおこで親なり年長者がこういうときはこうするんだと言えば、その言葉は生きてくる。
「ツライ」などの一見ネガティブな情動体験を与えておいて、そのときに「それでも生きるんだ」という情報を与えれば、脳はツラくてもがんばるべきだというふうに刻まれるわけでしょう。
それはしつけるほうのベースに愛情がなければできないんですよね。ただ殴ったり叱りつけるだけじゃ虐待、イジメになっちゃいますから。
P211
澤口 そうですね。そこが「三つ子の魂」であって、子どものうちに親が叱っておかなきゃいけません。それは父親の役割なんです。
現存するサルでも、多妻型のサルはボスに当たるオスが若いギャング集団を指導する役割を果たします。群れの規範を守らせるというのは、サルの世界でもメスではなくオスの役割なんです。
平然と車内で化粧する脳
澤口 俊之 (著), 南 伸坊 (著)
扶桑社 (2000/09)
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2000/09/01
- メディア: 単行本
父のいましめは、みなわが身の幸
小林 一茶
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章
フィリップ・チェスターフィールド (著), 竹内 均 (翻訳)
三笠書房 (2011/3/22)
P50
父から若き息子へ贈る「実りある人生の鍵」45章 (知的生きかた文庫)
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2011/03/22
- メディア: 文庫
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