死の定義 [哲学]
もちろん、心臓の停止、呼吸の停止、瞳孔の散大といった死の経過は、専門家として確認していきます。
しかし、その死の時間を機械の判断に任せるのではなくて、呼吸が止まったと周りの家族の人たちが納得した頃に、「診察をしてもよろしいでしょうか」と診させていただくようにしています。
家族の人たちにとって、それはけっこう曖昧な時間で、一度呼吸が止まっても吹き返すのではないかと思ってじっと見守っている時間です。
実際に短時間息を吹き返すこともあるわけですが、このように見守るプロセスがあった方が、生体反応が終わったんだということをゆっくり穏やかに受け止めることができるようです。
~中略~
死の定義というのは、その人といちばん深くかかわった人が、「やはり終わったんだな」と思えたときなのかなと思うことが最近は多くなりました。
山崎章郎
玄侑 宗久 (著)
多生の縁―玄侑宗久対談集
文藝春秋 (2007/1/10)
P90
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