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天災と日本人 [日本(人)]

P26
 日本人は破局のあとには強いが、危機自体の扱いは不得手である。危機管理などといっているから、それが逆にわかる。
実際に危機管理ができるなら、そんなことはまさに「いうまでもない」筈だからである。
フランス人の自由・平等・博愛みたいなものであろう。
養老 孟司

P31
池田 今回起こったのは未曾有の大きな天災だということは間違いないけれど、実はみんな、大地震や大津波はいつか起こるだろうと心の底では思っていたし、情報・知識としても知っていたわけですね。

震災後、「想定外」云々という言葉が飛び交ったけれども―いつ来るかわからなかったということや規模が想像以上だった点ではたしかに「想定外」だったかもしれないけれど―、いつか、どこかで、天変地異が起きるかもしれない、という気持ちを、多くの日本人は潜在意識の中に組み込んでいた。
だから、そんな意味合いにおいて、大きな地震が起きて大きな津波に襲われたこと自体はまったく「想定外」ではなかったと思うんです。

ほんとうの復興
池田 清彦 (著), 養老 孟司 (著)
新潮社 (2011/06)

ほんとうの復興

ほんとうの復興

  • 作者: 池田 清彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本


-1a8a9.jpg金剛輪寺明寿院庭園

P116
 安政大地震の折に町奉行から幕府へ提出された「地震後所々出火之儀申上候書付」と題する報告書から判断すると、焼失総面積は六十二万坪で、それにくらべて関東大震災の焼失面積は一千百五十万坪にも及ぶ大規模なものだったのである。
 江戸時代にくらべて大正時代のほうがはるかに消防能力は秀れていたのだが、地震による水道管の破壊によって消防力はほとんど無に帰していた。それに家屋の密集度も増していたこともあって、火災は自由に四方八方へのびたのである。

P131
 東京市の火災状況を調査した震災予防調査委員中村清二理学博士は、結論として地震よりもそれに伴う火災のほうが恐ろしいことを強調した。
そして、火災防止のためには最大の発火原因である薬品の管理方法の取り締まりを主張し、建物の耐火耐震構造を望んでいる。
~中略~

 最後に、中村は、江戸時代に防火のために火除原と称された広場や広い道路(広小路)が作られていたのに、それが無駄な場所と考えられ、いつの間にか民家で埋められてしまっていることを指摘している。
つまり防火思想が江戸時代より後退していることを嘆いているのである。

P335
 中村清二は、火災の研究がほとんど無視されていたことを鋭く指摘した。彼は、それらの資料を駆使して論文を発表したが、そのなかで水道は地震で破壊される運命にあるので近代消防は役に立たず、江戸時代にさかんにおこなわれた破壊消防の方が有効だと主張した。
 また中村は、民衆の火災に対する無知についても筆を進めた。地震とともに大火が発生した原因は、民衆が余震を恐れて火元を消すことをせず多くの家財等を持ち出したことになるとして、それによって多数の焼死者を出したと非難した。 

関東大震災
吉村 昭 (著)
文藝春秋; 新装版 (2004/08)

新装版 関東大震災 (文春文庫)

新装版 関東大震災 (文春文庫)

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/08/03
  • メディア: 文庫


[二三] 仏教で説く四大種の中では、水・火・風の三つはいつも災害を起こすけれど、大地というものは、特別な変化をしないもので、安定しているはずである。
昔、斉衡のころであったろうか、大地震があり、東大寺の大仏の御首が落ちなどする、ひどいことなどがあったけれど、その大地震も今度のはげしさにはかなわないということだ。
その大地震(住人注;元暦二年(一一八五)7月9日)も今度のはげしさにはかなわないということだ。
そこで、今度の大地震を経験した人は、みなこの世がつまらないものだということを話あって、少しは煩悩もうすらぐように見えたけれど、それから月日がたち、年が過ぎたあととなると、大地震のこと、それによって世のはかなさを嘆きあったことなどを、口に出していう人さえいやあしない。

方丈記 現代語訳付き
鴨 長明 (著), 簗瀬 一雄 (翻訳)
角川学芸出版; 改版 (2010/11/25)
P101

方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 鴨 長明
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2010/11/25
  • メディア: 文庫


 首都圏直下型の地震の場合、首都圏だけでも1万人以上の死者が出る可能性があるという。
 地震が来るのがわかっていながら高いビルを建て続けている。どんどん地下鉄網も延ばしてきた。もちろん地震対策をしている。
しかし、それはビルや地下鉄が壊れなくても、中に閉じ込められた人たちがどのくらいの日数、生きていけるかどうかとは別である。
 人間が作った数字、想定した数字は、前の経験を使って行った計算の結果にすぎない。関東大震災のときには、こんなに多くの高層ビルはなかった。

世の中の罠を見抜く数学
柳谷晃 (著)
セブン&アイ出版 (2013/3/1)
P224

世の中の罠を見抜く数学

世の中の罠を見抜く数学

  • 作者: 柳谷晃
  • 出版社/メーカー: セブン&アイ出版
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


 東湖は水戸藩の学者。幕末の日本人に多大な思想的影響を与えた。
西郷隆盛は東湖に面会して驚き、「天下、真におそるべき者なし。ただおそるべき者は東湖一人のみ」と評し、終生敬愛していた。
 その東湖は一八五五年の安政地震で圧死した。
徳川御三家は紀伊も尾張も一等地に屋敷をもらっている。しかし水戸家は初代頼房が末っ子で、はじめは松平姓で徳川姓も許されておらず、暴れん坊で将軍家から警戒されていたためか、屋敷も外堀の外の低地に与えられた。現在の東京ドームの遊園地の場所で、地震のたびに、よく揺れ、建物が倒れた。
 東湖の死は痛ましい。東湖の一家は揺れを感じてすぐに全員が庭に出た。ところが老母が「火鉢の火を消し忘れた」と揺れる建物に入ろうとした。「藤田家から火を出しては主君に申し訳ない(忠)と思ったのか命がけで飛び込んだ。東湖は危ないと母を追った(孝)。そこで建物が崩れ、東湖は辛うじて母を庭に投げ出したが、崩れてきた鴨井や梁に押しつぶされ、みずからは圧死した。
~中略~
 東湖が圧死する前年、一八五四年には伊賀上野地震がいきている。この地震で命拾いした学者家族の史料をみつけた。
猪飼(いかい)という藤堂藩の儒者の家。猪飼敬所は学者番付で「西の大関」とされた儒学の大家。その養子。猪飼貞吉(箕山)が被災の様子を書いていた。それによると、地震は真夜中におきた。震度六~七の猛烈な揺れだ。しかし地震はいきなりではなかった。数日前からたびたび揺れていた。それもあってか、猪飼は妻に一つのことを言い含めて有事に備えていた。
「小生の家には二人の男子がいる。兄は九歳。弟は(小児で)三歳。下男下女のいない家だから、平生から火急の節は、兄のほうは小生が抱き、小児は家内(妻)が抱いて逃げる」 
 この申しあわせがよかった。~中略~ まさに間一髪、「今、ひと足、遅ければ死を免れなかたっところ天の幸いで逃げられた」(「嘉永甲寅六月地震記」 西尾市立図書館岩瀬文庫蔵)。
 忠孝を貫いて死んだ藤田。夫婦で備え命を守りぬいた猪飼。二つの家の歴史が我々に厳然たる教訓を示している。
第一、事前に家族で地震時にどうするか話し合っているかで生死が分かれる。
第二、一度逃げたら、忘れ物を取りに家に戻ってはならない。

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災
磯田 道史 (著)
中央公論新社 (2014/11/21)
P147

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



糸井 「わからないから怖い」って不安に思っている人ほど、新しい情報に対してオープンじゃなかったりしますよね。
「触らぬ神に祟りなし」って感じで近寄らないようにしてたり、「何が何でも放射線はゼロにしてくれ」って、耳を塞いで言い張ってたり。地球のどこかにいる限り、放射線量はゼロにできないのに。
早野 あと、「わからない」であきらめてるような人って、知識がないわけじゃなくて、震災直後の混乱した中で発表された情報のままで知識が固定されてるんですよ。だから、知識がずっとリニューアルされてない。
糸井 ああ、たしかにそうですね。「知らない」とか「わからない」っていうよりも、古い知識で止まっちゃってる。

知ろうとすること。
早野 龍五 (著), 糸井 重里 (著)
新潮社 (2014/9/27)
P16

知ろうとすること。 (新潮文庫)

知ろうとすること。 (新潮文庫)

  • 作者: 早野 龍五
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫





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