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人間けだもの [宗教]

  やはりお坊さんとて人間です。弱いところもあるはずなのに、偽善ぶっていつまでも偉そうに説法しているのでは、ファンはついてこないに違いありません。
 書家の相田みつをの有名な言葉に「人間だもの」というのがあります。

 これに「け」の一字を入れると、「人間けだもの」。
「けだもの」だからといって、それがすべて悪いわけではありません。

 お坊さんとて、「人間けだもの」の自覚をもって、「弱さ」や「おもしろい」を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
その上でそれをどう制御していくか、そのことを考えるのが宗教だと私は思います。

マイ仏教
みうらじゅん (著)
新潮社 (2011/5/14)
P131

マイ仏教 (新潮新書)

マイ仏教 (新潮新書)

  • 作者: みうらじゅん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/05/14
  • メディア: 新書


DSC_6002 (Small).JPG高松

 

 

 

 

 偉そうに「自我」だとか「人間様」だとか、思い上がっている君の身体は、しょせん骨と腱を組み立てて、生肉と皮膚で表面を覆ってつくりあげた壊れやすい城にすぎない。
その血だらけの城の中には、刻一刻と細胞が老いてゆく老化現象と、細胞が死滅してゆく死亡現象と、自分を実際よりステキだと思い込むナルシズムと、君が嘘をついて隠している寂しい秘密などが、ぎっしりひしめき合っている。
法句経150 

超訳 ブッダの言葉
小池 龍之介 (著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2011/2/20)
一四一 

超訳 ブッダの言葉

超訳 ブッダの言葉

  • 作者: 小池 龍之介
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2011/02/20
  • メディア: 単行本


 二 この私という存在はそれが何であろうと結局ただ肉体と少しばかりの息と内なる指導理性(ト・ヘーゲモニコン)(2)より成るにすぎない。
書物はあきらめよ(3)。これにふけるな。君にはゆるされないことなのだ。
そしてすでに死につつある人間として肉をさげすめ。それは凝血と、小さな骨と、神経や静脈や動脈を織りなしたものにすぎないのだ。しかもつねに同じものではなく、時々刻々吐き出され、また呑み下される。第三に指導理性だが、つぎのように考えるがよい。
お前は老人だ(4)。これいじょう理性を奴隷の状態におくな。利己的な衝動にあやつられるがままにしておくな。また現在与えられているものにたいして不満を持ち、未来に来るべきものにたいして不安をいだくことを許すな。
(2) ストア哲学の専門用語。「統轄的(主導的)部分」などとも訳される。理性や知性ともほぼ同義で、肉体と対比される意味での魂、心とも重なるが、行為と選択の主体という倫理的な文脈で用いられるのが普通である。
(3)二巻三章、八巻八章参照。

マルクス・アウレーリウス 自省録
神谷 美恵子 (著)
岩波書店 (2007/2/16)
P25

 将来、多くの人間が諸君の人生に関わりを持ってくるであろうが、人間とは多種多様の要素が混在した不可解な存在である。
物好きで、風変りで、気まぐれで、かつ空想家でもある。だが、内面生活のちょっとした欠点をあれこれ詮索すればするほど、人間一般に見られる欠点は、すなわち自分自身のお欠点でもある、という思いに駆られることであろう。このように同じ欠点を持っていることを認めるのは耐え難いものであるかもしれない。
ただ、有難いことにわれわれには自己中心的なおめでたい自惚れがあってもその事実を忘れさせてくれる。それゆえ、仲間の人間に対して限りない忍耐と絶えざる思いやりの心を持つ必要がある。そうすれば、彼らとても、われわれに対して同じような態度を取らざるを得ないのではなかろうか。

平静の心―オスラー博士講演集
ウィリアム・オスラー (著), William Osler (著), 日野原 重明 (翻訳), 仁木 久恵 (翻訳)
医学書院; 新訂増補版 (2003/9/1)
P7
平静の心―オスラー博士講演集

平静の心―オスラー博士講演集

  • 作者: ウィリアム・オスラー
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2003/09/01
  • メディア: 単行本

 

P4
人間が努力の目標においているのが快楽であるというのは、充分に証明可能だと思う。快楽という言葉は、清教徒的な人の耳には不快な響きをもつので、むしろ幸福という言葉を用いようとしたした人が多い。
しかし、幸福とは快楽の継続した状態であるとしか定義できないのだから、快楽が非難に値するのなら、幸福だって同じだ。
快楽というと、とかく感覚的な喜びを指すらしいのは、人間の気持をよく示すものといえよう。普通の人には、審美的な喜びとか、努力の喜びとか、創造の喜びとかは、どぎつい官能の喜びに較べれば、まことに色褪せたものにすぎず、快楽と聞くとそんんなものは念頭に浮かばないのである。
(「作家の手帳」一九〇一年)

P73
仮に他の不和の種はすべて取り除かれたとしても、性的なことに関しては不和が生じよう。
自分が好きな女を、他の男も欲しがっているからというので諦める男はいないだろう。
恋愛があるかぎり、憎悪、悪意、嫉妬、怒りは必ずつきまとう。
情欲は絶えずよびさまされるだろうし、原始人の残忍な本能は、その支配を繰り返し主張するであろう。
(「作家の手帳」一八九六年)
モーム語録
行方 昭夫 (編集)
岩波書店 (2010/4/17)

モーム語録 (岩波現代文庫)

モーム語録 (岩波現代文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/04/17
  • メディア: 文庫


 

 生きるためには、みんな死にもの狂いだ。命を的に戦い、或いは厳しい労働をし、奪い、他人の痛みなどものともせず、自分を守るほかはない。
わたしはそれを見習えというのではない。人の命を奪わなくても自分が生きられる制度を作ったのが人間の文明である。しかしその動物本能の存在まで否定することは、虚偽的である。

人生の原則
曾野 綾子 (著)
河出書房新社 (2013/1/9)
P32

人生の原則

人生の原則

  • 作者: 曾野 綾子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/01/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


この身のありさま、臭く穢らわしき事、譬(たと)えていはんかたなし。
頭」と答えてくれた。
しばらくして、「私は今夜はここにおります」という手紙をもらった僧都は、期待して訪ねた。 すると、女房は暗い部屋にやって来て、「重い仰せでしたので、こうしてやって参りました。でも、私の体は、あなたがお思いになっているようなものではありません」と、掲出の言葉を語り出す。
 「この身のの中には脳髄間なく湛(たた)へたり。膚(はだへ)の中に、肉(ししむら)・骨纏(まつ)へり。
すべて、血流れ、膿汁垂りて、一つも近付くべき事なし。
 「閑居友」巻下・第九話「宮腹の女房の、不浄の姿を見する事」

 ある僧都が恋に落ちてしまった。相手の女性は、皇女を母に持つやんごとない女房である。貴い僧としてあるまじきことだが、ある日、その思いを打ち明けた。すると女房は、「そんなにお悩みになることではありません。里に退出した時に必ずお呼びしましょう有様は、臭く穢らわしいもので、たとえようもありません。頭の中には、脳髄がすき間なく詰まっています。肌の内側には肉や骨がつながっています。血が流れ、膿の汁が垂れていて、とても近づきたくなるようなものではありません」。男は美女の姿を見れば、衣服の下の肌を見たい、それに接したいと思うが、その肌のさらに内側にあるのは、臓器や筋肉や骨や血管である。
しかもそれは理科教室にあった人体標本とは違って、どろどろと生臭く、触れることさえためらうようなものなのだ。そんなものにあこがれるのはおかしなことだと女房は言うのである。
「肉体というものは、実はそんな醜悪なものであるのに、お香などでさまざまな匂いをつけ、いろいろとその身を飾ることによって、何となく美しく、心ひかれる姿のように見えるだけなのです。その本当の姿をご覧になれば、きっと気味悪く、恐ろしくお思いになることでしょう。このことを詳しくお話ししようと思って、こちらにお呼びしたのです。と述べた女房は、「火ともして参れ」と命じ、灯火であかあかと部屋を照らすと、几帳を引いて姿を見せた。
その姿は、髪はそそけ上がって鬼のようであり、気品のあった顔も青や黄色のまだらに変色し、足なども見苦しく汚い色に変わっていて、ところどころに血の付いた着物はとても臭く、見るに堪えない姿であった。
 女房はさまざめと泣きながら訴えた。「毎日、体を美しくとりつくろうのをやめて、ただ成り行くままにしていたら、体も着物もこのようになってしまうものなのです。仏の道に入っていらっしゃるあなたのようなお方に、偽りの姿を見せてはならないと思いまして、このようにありのままの姿をお見せするのです」。僧都はものも言えず、ただ泣くばかりであった。
やがて、「すばらしい真実の友に会うことができて、心を改めることができました」と礼を言い、帰って行ったという。慶政上人の編といわれる鎌倉時代の説話集「閑居友(かんきょのとも)」に収められた説話である。
~中略~

 不浄観を語る説話は他にもあるが、右の説話と好一対をなすのが、鴨長明の編んだ「発心集」巻四第六話である。
高徳の聖であった玄賓(げんびん)が、美しい人妻に恋をして、会って欲しいと懇願した。
しかし、実際にその女性が姿を見せると、玄賓二時間ほど美女をじっと見つめながら爪弾きをして、近寄ることもなく帰って行った。
おそらく玄賓は目の前の美女を見つめながら、心の中では、「これは美女に見えているが、肌の内側には肉や骨がつながっていて、血が流れ、膿の汁が垂れていて、ほんとうは見るに堪えないものなのだ」と、不浄観によって女性の魅力を否定する修行をしていたのであろう。
自力で誘惑を断ち切ったところが、先の説話の僧都と違う、玄賓の偉いところである。源信の「往生要集」を読めば、私たちの肉体がいかに不浄なものであるか、詳しく描写されており、美女の肉体が死後どのように朽ち果ててゆくかは、「九相詩絵巻」に絵画化されている。
平安時代や鎌倉時代には、こうした見方で女性へのあこがれを断ち切ろうとした男たちがたくさん存在した。逆に言えば、そのように自分に言い聞かせなければ、女性の肉体の魅力に勝てなかったのである。後略~
佐伯真一

からだ (人生をひもとく 日本の古典 第一巻)
久保田 淳 (著),佐伯 真一 (著), 鈴木 健一 (著),高田 祐彦 (著),鉄野 昌弘 (著),山中 玲子 (著)
岩波書店 (2013/6/19)
P14

からだ (人生をひもとく 日本の古典 第一巻)

からだ (人生をひもとく 日本の古典 第一巻)

  • 作者: 久保田 淳
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/06/19
  • メディア: 単行本


実際に軍事紛争調停や環境交渉の仕事をするようになってからも、いや、むしろ実地でさまざまな問題と向き合っているうちにますます、「自分の生きているうちに環境問題や戦争は一〇〇パーセント解決することはないだろう」という思いは強くなっています。
人間の心のありようが変わらない限り、人間が引き起こす問題は終らないでしょう。

交渉プロフェッショナル
島田 久仁彦 (著)
NHK出版 (2013/10/8)
P18

交渉プロフェッショナル 国際調停の修羅場から (NHK出版新書)

交渉プロフェッショナル 国際調停の修羅場から (NHK出版新書)

  • 作者: 島田 久仁彦
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2013/10/08
  • メディア: 新書


 われわれはその心の中に獣的本能があることを知っている。それは、我々のさらに高尚な人間性が眠るのに比例して目覚めてくるものだ。
それは爬虫類的、肉欲的なもので、おそらく全く駆逐することは不可能であろう。
健康な生活を送っている時でも、その肉体に棲みつく寄生虫のようなものだ。
われわれは多分、その獣的本能から抜け出すことはできるだろうが、その性質を決して変えることはできない。私はその獣的本能によって、自分の独得な、ある種の健康を享受しているのではないかと心配している。
つまり、われわれは健康であっても、純潔ではないかもしれぬということだ。
先日、白くて、丈夫そうな歯と牙がついている猪の下顎骨を拾ったが、そこには精神的なものとは全く別の動物的健康さと活力が秘められていることを暗示していた。この動物は、節制とか純潔とかいう言うものとは違う別な手段で立派に生きてきたのだ。

森の生活
D・ヘンリー・ソロー (著), 佐渡谷 重信 (翻訳) (著)
講談社 (1991/3/5)
P323

森の生活 (講談社学術文庫)

森の生活 (講談社学術文庫)

  • 作者: D・ヘンリー・ソロー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/03/05
  • メディア: 文庫


P73
 実は最新の研究によって、ある特定の遺伝子の特殊な変異体を持つ人は、それを持たない人に比べて、不倫率、未婚率が高いことがわかってきました。
 その遺伝子を持つ人は、性的な行動だけでなく一般的な行動においても違いがあり、たとえば「他者に対する親切な行動」の頻度が低いこともわかっています。これが「不倫遺伝子」の正体ではないか、とも言われています。
~中略~
 人口のおよそ50%はこの「不倫遺伝子」を持っているとの報告もあります。なんと、2人に1人は不倫型というわけです。生まれつき「一夫一婦制の結婚には向かない人」がいる、ということを、ぞっとするような思いでとらえる人もいるかもしれません。

P74
 一方、不倫が芸術作品の原動力になってきた面もあります。柳原白蓮(やなぎはらびゃくれん)、林芙美子、太宰治、瀬戸内寂聴、檀一雄・・・・・・不倫を創作のエネルギーにしてきた作家は枚挙にいとまがありません。
 海外をみても、不倫を芸術作品に昇華させた著名人は、ゲーテ、ハイドン、チャイコフスキー、ジョン・レノン、エリック・クラプトン・・・・・こちらも数え上げればきりがありません。
 不倫戦略が繁殖適応的である環境が存在する以上、この先不倫がなくなることはないだろうと考えられます。むしろ、繁殖適応的でもないのに人間のあとづけによる「倫理」があらゆる環境で優先されていけば、人類そのものがなくなる可能制すら生じます。
 一方で、ややこしいことですが、社会性を優先し、不倫バッシングを「快感」とする機構が私たちの脳に存在する以上、不倫バッシングもなくなることはないでしょう。
 バッシングされてしまうとわかっていても、不倫をしてしまう、他人のことをとやかく言えた義理でないのに、自分のことは棚にあげて、不倫バッシングにそしむ・・・・・
この絶対的自己矛盾の中で人類が生きているからこそ、さまざまな物語が生まれるのかもしれません。

空気を読む脳
中野 信子 (著)
講談社 (2020/2/20)


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