維摩経 [宗教]
「維摩経」という経典は、徹底した在家主義をとる経典ですから、出家とはなにかという問題が折にふれて出てきます。出家とは、家庭生活や世間的なことがらにわずらわせられず、もっぱら修行生活にうちこむことをいいます。
そうだとすると、出家することによって、なにか功徳があるとか、利益が得られるとか考えること自体がおかしい、ということになります。
維摩経をよむ―日本人に愛されつづけた智慧の経典
菅沼 晃 (著)
日本放送出版協会 (1999/06)
P93
維摩経をよむ―日本人に愛されつづけた智慧の経典 (NHKライブラリー)
- 作者: 菅沼 晃
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2020/11/11
- メディア: 単行本
P252
娑婆世界といううちの娑婆とは、サンスクリットのサハーの音写で、語源的には「耐え忍ぶ」という意味を表すことばです。そこで娑婆世界は「忍土、忍界」と訳されることもあります。
この世界に住む衆生はさまざまな煩悩によって苦しみ、また、風雨や寒暑に苦しめられ、常に煩悩を耐え忍ばなければならないので娑婆=忍土といわれる、と解釈されています。
P103
一般に、宗教においては、絶対的な存在者、教祖、あるいは師などから、「あなたは必ず救済される」という予言を受けることは、きわめて大切な問題だと思います。
このような師のことばに励まされ、修行の道をすすんで行く場合も少なくないでしょう。しかし、維摩は大乗仏教の原理を示し、他の人から予言を受けるのではなく、自分自身で真如と一体となることを自覚するのが、仏教の救済というものだ、と言っているのです。
維摩経をよむ―日本人に愛されつづけた智慧の経典 (NHKライブラリー)
- 作者: 菅沼 晃
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2020/11/11
- メディア: 単行本
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