人は小さな存在である [ものの見方、考え方]
人はその内よりしてこれをいうときは、天地をも籠蓋し古今をも包括しているものである。
天地は広大であるが人の心の中のものに過ぎぬ。古今は悠久であるがやはり人の心の中に存するものである。人の心は一切を容れて余りあるものである。
しかしその外よりしてこれをいうときは、人の天地の間にあるのは、大海の一滴の如く大砂漠の一砂粒の如きものであり、また人の古今の間にあるのは、天空の一塵の如く大河の―浮漚
(ふおう)の如きものである。
人は空間と時間との中の一の幺微
なるものに過ぎぬのである。
四季と一身と(明治四十四年六月)
努力論
幸田 露伴 (著)
岩波書店; 改版 (2001/7/16)
P123
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