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死に直面した人に対して [哲学]

南(住人注;南直哉)「よくわかる」って言います。
「そうだろう。だけど僕はあなたが生きることを選ぶのを望むし、それが尊いと信じるね」と言うんです。「だけどあなたが死ぬというなら、その気持ちもよくわかる」と言います。
もうね、人間、そこまで行った状態だと理屈なんか届かない世界ですから。
で、何をやるかというと、私、笑わせようとするんです。
~中略~

 死に直面した人というのは、もうね、通常の言葉は届かない。それは本人がいちばんよく知っている。
だからそういう人に仏教の教義とか哲学などはほとんど無意味です。

宮崎哲弥 仏教教理問答
宮崎哲弥 (著)
サンガ (2011/12/22)
P184

宮崎哲弥 仏教教理問答

宮崎哲弥 仏教教理問答

  • 作者: 宮崎哲弥
  • 出版社/メーカー: サンガ
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

DSC_9740 (Small).JPG平山温泉

「あなは死なないほうがいいような気がするんだけどなあ。やっぱり死ななきゃならん都合もあるのかねえ。そんな場合もあるかもしれんけど、なろうことなら死なないほうがいいんだがねえ」
というようなことを言うのはどういう場合かと言うと、このあいだ福岡であった事件(二〇〇八年七月、福岡市の中心部にあるビルの高層階より飛び降りを試みようとした若い女性を消防隊員が説得し、無事に保護した。)のようなときね。
 ビルの窓に腰掛けて、今にも飛び降りようとしている人に「やめなさい!」と強く言うと、かえって飛び降りるかもしれんから、「あなたの気持ちも分からんではないがねえ」とか言いながら近寄って、捕まえられるぐらいに近くまで行って、ぎゅっと捕まえる。

神田橋條治 医学部講義
神田橋 條治 (著), 黒木 俊秀 (編集), かしま えりこ (編集)
創元社; 初版 (2013/9/3)
P214

神田橋條治 医学部講義

神田橋條治 医学部講義

  • 作者: 神田橋 條治
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2013/09/03
  • メディア: 単行本

中川 患者さんががん、あるいは死に直面したときに、どういう過程を経るのかを研究したキュブラー・ロスというアメリカの方がいるんですが、彼女の研究によると、患者さんは、自分のがんまたは死を、まず「否認」します。次に「なんで自分が?」と「怒り」、「もし治ったら・・・・」と神様と「取り引き」をして、「抑うつ」など経て、それを「受容」する、というふうにまとめられているんですが、そこでいう「取り引き」とは、神と人間との取り引きなんですよね。
そういう考え方が、たぶんキリスト教的であって、それが日本の患者さんに直接当てはまるかどうかはなかなかむずかしいです。
 日本の患者さんが死を受け入れる背景には、何があるのかかなり関心を持っていまして、自然に帰るというような感じでしょうか、西洋人の受容と違った「あきらめ」とでもいうんですかね、無視っていうか、そういうところもあるよう思います。
それから「あの世」という概念が、やはり患者さんのみならず、われわれにもあるわけですね。死者と生きてるわれわれとの交流、たとえばお盆なんかがそういう典型かと思いますが、そういうことはかなり西欧の考え方違いますね。

自分を生ききる -日本のがん治療と死生観
中川恵一 (著), 養老孟司 (著)
小学館 (2005/8/10)
P101

自分を生ききる: 日本のがん治療と死生観

自分を生ききる: 日本のがん治療と死生観

  • 作者: 中川 恵一
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/07/15
  • メディア: 単行本

 このような人にはどうやって対処するか。
 まあいろいろな方策を講ずるにせよ、けっきょくのところは「わたしは、あなたに死なれるのは嫌だ。だから自殺はやめてくれ」と繰り返すしかありません。
 ここで肝心なのは、「死ぬのは間違っている」「命はかけがえがないんだ」などと言わずに「わたしは、あなたに死なれるのは嫌だ」と言い張っているところにあります。
理由なんかない、しかし自分としては相手が死んでしまうのは無念である、とそれだけを言う

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室
春日 武彦 (著)
医学書院 (2007/07))
P032

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室

  • 作者: 春日 武彦
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 単行本

P132
「死にたい」という言葉は、患者さんに関わるすべての人に、大きなインパクトを与える言葉であるために、さまざまなメッセージが隠されており、この訴えがそのまま自殺企図につながらないケースもあります。すなわち、この言葉が、「自分のつらさをわかってほしい」「自分のほうにもう少し目を向けてほしい」「私を見捨てないでほしい」などといったメッセージの表現として発せられることがあるのです。
 事実、自殺企図者のなかには、「死にたい」と誰かに訴えた人もいれば、誰にも訴えずに自殺した人も多くいます。「死にたい、生きていたくない」という訴えに細心の注意を払いつつ、本人が訴えたい内容が何らかを把握できるように、丁寧に面接を進めていくことが必要でしょう。

P133
「死にたい」のではなく、「そのような状況から一時的に消えたい」「何かも忘れてゆっくり眠りたい」と感じてそのような行為に至ってしまう人も多くいます。
 そのような患者さんでは、自己評価が低く常に空虚感を抱いていたり、他者からの評価に敏感で見捨てられることを強く怖れていたり、情緒が不安定で怒りの制御が困難であったりというパーソナリティ面の問題が浮かび上がってくるケースも少なくなりません。
 そのような場合では、「死にたい。生きていたくない」という訴えが、「私のしんどさをわかってほしい」「見捨てないでほしい」ということに他ならないわけですが、その訴えは、こころのSOSを発しているとも言えます。
ところが、当初は家族も友人もそのような言葉に驚き、対応しようとするのですが、何度も「死にたい」という言葉とともに自傷行為が繰り返されると、だんだん本人の訴えに真剣に耳を傾けなくなっていきます。そのために、本人の自傷行為はますますエスカレートしていくことになり、ついには誤って死に至ってしまうというケースもあるので、医師に相談するなど、適切な対応が求められます。

精神科医はどのように話を聴くのか
藤本 修 (著)
平凡社 (2010/12/11)

精神科医はどのように話を聴くのか

精神科医はどのように話を聴くのか

  • 作者: 藤本 修
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2010/12/11
  • メディア: 単行本

P103
 がん患者の経験する苦悩は時として深く,がん医療の現場では,患者から,「早く死んでしまいたい」,「早く逝かせてほしい」などの言葉が聞かれることも稀ではない。
しかし,これまでの検討からは,がん患者の希死念慮の背景には,痛みをはじめとした身体症状,うつ病や絶望感などの精神症状,自律性の喪失や依存の増大などの実存的な苦痛,乏しいソーシャルサポートなど多彩な苦痛が存在していることが示唆されている1)。
さらに,早い死を望んだ進行がん患者を対象として,その意味することを質的に検討した報告からは,「早い死の希望」は多くの意味を含んでおり,”生きたい”ことに対する逆説的表現,死にゆく過程のつらさ,今,現在の耐え難い苦痛(痛みなど)に対する援助の求め,今後,起こり得る耐え難い苦痛から解放される対処法のひとつ,ひとりの個人として関心を抱いてほしいという欲求,家族から見捨てられる不安,悲観,苦悩などを表現するためのコミュニケーションである可能性が指摘されている2)。
 したがって,「死にたい」と言葉を投げかけてくる患者の背景には,このようなさまざまな「意味」が存在する可能性を念頭においておく必要がある。
言い換えると,ほとんどの場合には,「死にたい」という表現の背後には,掬い取られてない何らかの患者ニードや緩和されていない苦痛があることを示唆しているのである。

P106
表10-14 「死にたい」と述べる患者とのコミュニケーション
コミュニケーションを継続する 
 「死にたいと思っていらっしゃるのですね。そのことについてもう少しお伺いしてもよろしいですか?」
 「今,感じていらっしゃることを,もう少しお話いただけますか?」
患者の苦痛を探索する
 「死んでしまいたいとおっしゃいましたが,きっと何かつらいことがおありなんでしょうね。よろしかったら,そのことに関して,もう少しお話しいただけませんか?」
 「きっと何か気がかりなことた心配なことがおありなのでしょうね。今,一番ご心配ことをお話いただけませんか?」
 「つらく感じていらっしゃることについてお聞きしてもいいですか?」
患者の苦痛に共感的に関わる
 「これだけ痛みが続いているとそんな気持ちにもなりますね」
 「これからのことが不安で,そんな気持ちになられるのですね」
 「死にたいと感じるぐらい,おつらいのですね」
 「本当に無念ですよね」
 「つらかったですね」
患者の経験を肯定する(肯定)
 「あまりにつらいときは,多くの患者さんがそのようにおっしゃいます」
 「今の状態であれば,そのように感じられるのも自然なことなのでしょうね」
 「同じようなお気持ちを経験された方は,他にもたくさんいらっしゃいますよ」

がん医療におけるコミュニケーション・スキル―悪い知らせをどう伝えるか
内富 庸介 藤森 麻衣子 (編集)
医学書院 (2007/10/1)


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